テート・ブリテン:世界最大のターナー・コレクションが眠る、英国美術の殿堂
ロンドン・テムズ河畔にある、16世紀から現代までの英国美術を専門とする美術館。J.M.W.ターナーの遺贈作品を中心とする世界最大のターナー・コレクションと、ラファエル前派の名品で知られます。
はじめに:英国美術専門の美術館
テート・ブリテンは、1897年7月にロンドンのテムズ河畔、ミルバンクに開館した美術館です。砂糖の精製で財を成した実業家ヘンリー・テートが自らの美術品コレクションを寄贈し、建設資金も提供したことで実現しました。建物はシドニー・R・J・スミスの設計で、正面に古典主義の列柱を構えた堂々たる外観をもちます。開館当初の名称は「ナショナル・ギャラリー・オブ・ブリティッシュ・アート」。その後長く「テート・ギャラリー」の名で親しまれましたが、2000年3月にこの館が「テート・ブリテン」へ改称され、同年5月に現代美術専門のテート・モダンがテムズ川対岸の発電所跡へ開館したことで、こちらは16世紀から現代までの「英国美術」を専門に扱う美術館として、現在の役割を担うことになりました。
コレクション:ターナーの遺贈とラファエル前派
最大の柱は、画家J.M.W.ターナーが自らの作品を国家に遺贈した「ターナー遺贈」です。1851年の没時にアトリエへ残されていた油彩約300点と、300冊のスケッチブックを含む膨大な素描・水彩からなり、世界最大のターナー・コレクションを形成しています。これらを収めるために増築されたのがクロア・ギャラリーで、ポストモダン建築の旗手ジェイムズ・スターリングの設計により1987年に開館しました。あわせて、19世紀半ばにラファエロ以前の美術へ立ち返ろうとアカデミズムに反旗を翻した若い画家たちの一団、ラファエル前派の代表作も充実。ブレイク「ニュートン」やコンスタブル「フラットフォードの製粉所」など、英国絵画の節目を飾る作品も見逃せません。
3つの見どころ
ターナー「ノラム城、日の出」
城の輪郭さえ光の中に溶け込ませた、晩年のターナーが到達した抽象的とも言える光の表現の極致です。何が描かれているかを探すより、朝日そのものを浴びているような感覚に身を委ねたい一枚です。
ミレイ「オフィーリア」
『ハムレット』の一場面、川に流されて死んでゆくオフィーリアを描いた、ラファエル前派を代表する作品です。ミレイは水辺の草花を写生にもとづいて一本ずつ描き分け、少女の顔には諦めとも恍惚ともつかない表情を与えました。
ウォーターハウス「シャロットの女」
テニスンの詩に取材し、呪いを破って舟で川を下る乙女を描いた物語性豊かな一枚。1894年にヘンリー・テート自身から寄贈された、館を代表する作品のひとつです。
施設情報・アクセス
所在地: イギリス・ロンドン(Millbank, London SW1P 4RG)
アクセス: ロンドン地下鉄「Pimlico」駅から徒歩約8分。庭園整備のためミルバンク側の正面入口は閉鎖中で、アタベリー・ストリート側のマントン入口から入館します
開館時間: 10:00~18:00(最終入場17:30)
入館料: コレクション展示は入館無料(企画展は有料・事前予約制)
代表作ギャラリー



作品画像はパブリックドメイン(出典: Wikimedia Commons)