五島美術館:国宝「源氏物語絵巻」を春に公開、上野毛の丘の日本美術コレクション
東急グループの礎を築いた五島慶太のコレクションを核に1960年開館。国宝「源氏物語絵巻」「紫式部日記絵巻」を所蔵し、毎年恒例の期間限定公開が風物詩となっています。
はじめに:財界人の審美眼が生んだ美術館
五島美術館は、東急グループの礎を築いた実業家・五島慶太の収集品をもとに、1960年(昭和35年)4月に東京・上野毛へ開館した美術館です。五島自身は開館の前年に世を去り、その遺志を継ぐかたちで開館にこぎつけました。日本と東洋の古美術約5,000件を収蔵し、国宝5件、重要文化財50件を数えます。国分寺崖線の斜面を利用した約6,000坪の庭園も含め、都心とは思えない静けさの中で名品と向き合える場所です。
コレクション:王朝文化の最高峰
コレクションの頂点は、平安時代の国宝「源氏物語絵巻」です。現存する源氏絵巻のなかで最古のもので、引目鉤鼻と呼ばれる顔の描き方、屋根を取り払って室内を俯瞰する吹抜屋台の手法など、王朝絵画の到達点とされます。当館が所蔵するのは「鈴虫」二場面と「夕霧」「御法」にあたる部分で、名古屋の徳川美術館と分蔵されており、両館の所蔵分をあわせてはじめて全体像が見えるという関係にあります。作品保護のため常時は公開されず、毎年春のゴールデンウィークの頃に1週間程度公開されるのが恒例で、この時期には全国からファンが詰めかけます。ほかに国宝「紫式部日記絵巻」、古林清茂や無準師範の墨蹟、重要文化財の「佐竹本三十六歌仙切」など、茶道具や古写経、中国の陶磁まで幅広く充実しています。さらに館内には、五島慶太が蒐集した古典籍を受け継ぐ大東急記念文庫が併設されており、こちらも国宝3件・重要文化財33件を含む約2万5千冊を擁しています。
3つの見どころ
国宝「源氏物語絵巻」
王朝絵画の様式美の原点というべき作品です。公開は年に一度、ごく短い期間に限られるうえ、出品箇所も年によって異なります。訪問前に必ず公式情報で会期を確認してください。
吉田五十八設計の本館
数寄屋建築の近代化を成し遂げた吉田五十八による、和風モダニズム建築の代表作です。寝殿造の意匠を随所に取り入れた造りで、1961年に建築業協会賞を受賞。本館と2棟の茶室は2017年に国の登録有形文化財となりました。
石仏の点在する庭園
国分寺崖線の斜面を活かした起伏ある庭園は散策自由です。多摩川へ向かって下る雑木林の道に石仏や石塔が点在し、四季の花とあわせた散策が楽しめます。展示室で古美術と向き合ったあと、そのまま林のなかへ歩き出せるという構成が、この館の時間の流れをつくっています。
施設情報・アクセス
住所: 〒158-8510 東京都世田谷区上野毛3-9-25
アクセス: 東急大井町線「上野毛」駅から徒歩5分
開館時間: 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌平日)、展示替え期間、夏期整備期間、年末年始
観覧料: 一般1,100円(特別展は別料金)