エルミタージュ美術館:冬宮殿に集う、ロマノフ王朝が愛したレンブラント
ロシア・サンクトペテルブルクの冬宮殿を中心とする世界最大級の美術館。エカチェリーナ2世の収集品を核に、レンブラントやカラヴァッジョなど西洋美術の至宝約300万点を収蔵しています。
はじめに:女帝が築いた美の帝国
エルミタージュ美術館は、ロシア・サンクトペテルブルクにある世界最大級の美術館です。1764年、ロシア女帝エカチェリーナ2世がベルリンの商人から西欧絵画225点をまとめて購入したことに始まり、以来歴代皇帝が収集を重ねてきました。館名はフランス語で「隠れ家」を意味し、当初は宮廷のごく限られた人々だけが作品を眺める私的な空間でした。中心となる建物は、建築家バルトロメオ・ラストレッリが手がけたバロック様式の冬宮殿で、ロマノフ王朝の居城として使われてきた建築です。19世紀半ばに新エルミタージュが一般公開され、革命後は国立美術館として広く開かれました。
コレクション:300万点を超える規模
収蔵品は約300万点と、世界でも屈指の規模を誇ります。西欧絵画ではレンブラントの作品群が特に充実しており、17世紀オランダ絵画の質と量は他館を圧倒します。レオナルド・ダ・ヴィンチ「リッタの聖母」「ブノワの聖母」、ラファエロ「コネスタビレの聖母」といったイタリア・ルネサンスの名品も擁し、加えて実業家シチューキンとモロゾフが集めたマティス「ダンス」「音楽」やピカソ、ゴーギャン、セザンヌら20世紀初頭のフランス絵画も収蔵しています。これらの近代絵画は、宮殿広場を挟んで向かい合う旧参謀本部の建物で公開されています。宮殿建築そのものが金と大理石で飾られた美術品であり、作品と建築の両方を楽しめる稀有な美術館です。
3つの見どころ
レンブラント「放蕩息子の帰還」
レンブラント最晩年の傑作です。放蕩の果てに帰ってきた息子を、老いた父が両手で抱きしめる場面。暗い背景から静かに浮かび上がる二人の姿と、息子の背に置かれた父の手の描写は、見る者の心を打ち続けてきました。
レンブラント「ダナエ」とカラヴァッジョ「リュート弾き」
「ダナエ」は神話を題材にした官能的な傑作で、過去に破損事件に遭いながらも長期の修復を経て今日に伝わっています。カラヴァッジョ「リュート弾き」は、光と影を操る画家ならではの緻密な静物描写と人物表現が同居する一枚です。
冬宮殿という建築そのもの
金泥と鏡に埋め尽くされた大広間、寄木細工の床、天井画。作品を見に来たはずが、部屋そのものに足を止めてしまう——そんな体験ができます。大使の階段(ヨルダン階段)や自動人形仕掛けの「孔雀の時計」など、調度品にも見どころが尽きません。
施設情報・アクセス
所在地: ロシア・サンクトペテルブルク(Дворцовая площадь, 2, Санкт-Петербург)
アクセス: サンクトペテルブルク中心部、宮殿広場に面する冬宮殿内
開館時間: 10:30~18:00(水曜・金曜は21:00まで)
休館日: 月曜日
入館料: 一般600ルーブル前後。なお現在は日本からの渡航環境が大きく変わっているため、訪問を計画する際は最新の情報を必ず確認してください。
代表作ギャラリー



作品画像はパブリックドメイン(出典: Wikimedia Commons)
