ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントン):新大陸で唯一のダ・ヴィンチに会える
ワシントンD.C.の国立美術館。「ジネヴラ・デ・ベンチの肖像」は、南北アメリカ大陸で唯一鑑賞できるレオナルド・ダ・ヴィンチの油彩画として知られています。
はじめに:国が運営する無料の美の殿堂
ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは、1937年にアメリカの首都ワシントンD.C.に設立された国立美術館です。銀行家で財務長官も務めたアンドリュー・W・メロンが、自身のコレクションと建設資金をあわせて国に寄贈したことが出発点となりました。以来、多くの篤志家からの寄贈によってコレクションを拡充してきた歴史があり、国立でありながら作品購入は寄付金でまかなうという独特の運営を続けています。ナショナル・モールに面し、スミソニアン協会の博物館群と並んで建つため、一日でいくつもの施設をはしごする旅行者も少なくありません。そして最大の魅力は、入館が無料であることです。
建築:新古典主義の西館とI.M.ペイの東館
敷地は、西館(ウェスト・ビルディング)、東館(イースト・ビルディング)、そして彫刻庭園(スカルプチャー・ガーデン)の3つで構成されます。1941年に完成した西館はジョン・ラッセル・ポープの設計で、パンテオンを思わせる巨大なドームと列柱を備えた新古典主義建築。竣工当時は世界最大級の大理石建築でした。1978年に加わった東館はI.M.ペイの設計で、二つの三角形を組み合わせた鋭角的なモダニズム建築ですが、外装には西館と同じテネシー産のピンク大理石が用いられ、新旧が静かに呼応しています。西館が中世から19世紀までのヨーロッパ絵画とアメリカ美術、東館が近現代美術を受け持つという役割分担です。
コレクション:新大陸で唯一のダ・ヴィンチ
最大の目玉は、レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネヴラ・デ・ベンチの肖像》です。南北アメリカ大陸で公開されているダ・ヴィンチの油彩画は、これ一点のみとされています。オランダ絵画も充実しており、フェルメールは《天秤を持つ女》《手紙を書く婦人》《赤い帽子の娘》などを所蔵。レンブラント《自画像》(1659年)も見逃せません。
3つの見どころ
1. レオナルド・ダ・ヴィンチ《ジネヴラ・デ・ベンチの肖像》
アメリカ大陸唯一のダ・ヴィンチ油彩画。若い女性の静謐な表情と、背景に茂るビャクシンの刺々しい葉の対比が強く印象に残ります。
2. ヨハネス・フェルメール《天秤を持つ女》
窓からの光のなかで、空の天秤を手にする女性。背後の壁には「最後の審判」の絵が掛かり、静けさの奥に重い主題が潜んでいます。
3. 二館をつなぐ地下通路
西館と東館を結ぶ地下のコンコースには、レオ・ヴィラリールによる光の作品《マルチバース》が設置され、移動そのものが体験になります。
施設情報・アクセス
所在地:アメリカ・ワシントンD.C. ナショナル・モール沿い(Constitution Ave NW、3rd〜9th Street の間)
アクセス:ワシントンメトロ「Archives-Navy Memorial-Penn Quarter」駅、「Judiciary Square」駅、「Smithsonian」駅などから徒歩圏
開館時間:毎日10:00〜17:00
休館日:12月25日、1月1日
入館料:無料。特別展や上映プログラムは、時期により事前の時間指定予約が必要になる場合があります。
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作品画像はパブリックドメイン(出典: Wikimedia Commons)