すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢:ルノワールが4歳の少女を包んだ青

すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢:ルノワールが4歳の少女を包んだ青

名画
作者
ピエール=オーギュスト・ルノワール
制作年
1876年
所蔵
アーティゾン美術館
所在地
東京都中央区

ルノワールが1876年に描いた4歳の少女の肖像画です。モデルは画家を支えた出版業者シャルパンティエの長女。東京・京橋のアーティゾン美術館が所蔵し、「石橋財団コレクション選」で公開されています。大人用の椅子との対比と、影に引かれた青い線が見どころです。

アーティゾン美術館(東京・京橋)が所蔵するルノワールの《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》は、1876年に描かれた油彩画です。モデルは画家を支えた出版業者の長女で、描かれたときはまだ4歳でした。日本にいながら、30代半ばのルノワールが到達した肖像画の名品に出会えます。

《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》とは

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841–1919)が1876年に手がけた油彩・カンヴァスの作品で、大きさは97.8×70.8センチです。描かれているのは、パリで出版業を営んでいたジョルジュ・シャルパンティエの長女ジョルジェット。青いドレスと靴下を身につけ、椅子にすわって微笑んでいます。アーティゾン美術館の解説によれば、伝統的な肖像画のような堅苦しい雰囲気はなく、モデルのくつろいだ様子が生き生きと表現されています。シャルパンティエ家の肖像画として最初に依頼されたのがこの一点で、翌1877年の第3回印象派展にも出品されました。

依頼主のシャルパンティエは、ゾラやモーパッサンらの小説を世に送り出した出版人でした。妻マルグリットが自宅で主催した文学サロンには芸術家や政治家が集まり、パリの文化を動かす社交の場になっていました。1875年に印象派の画家たちが開いた作品の売り立てで、夫妻はルノワールの作品3点を購入します。それをきっかけに両者は親しく交流するようになり、この肖像画の依頼へとつながりました。無名に近かった画家にとって、有力な支援者を得た記念すべき仕事だったのです。

どこで見られる?

  • 所蔵先:アーティゾン美術館(公益財団法人石橋財団)
  • 所在地:東京都中央区京橋1-7-2、ミュージアムタワー京橋
  • 展示状況:「石橋財団コレクション選」(2026年6月23日~10月4日)の5階展示室に出品されています。同企画は年間を通じて展示替えがあるため、常時公開ではありません
  • 観覧料:ウェブ予約チケットが一般1,200円、窓口販売チケットが一般1,500円です。高校生・大学生・専門学校生はウェブ予約のうえ無料、中学生以下も無料です
  • 入館方法:日時指定予約制です。開館時間は10時から18時、金曜日は20時までです

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 大人用の椅子との対比:足を組んだおしゃまなポーズと、体には大き過ぎる椅子。このサイズ差が少女の可愛らしさを際立たせています
  • 影に引かれた青い線:近くで見ると、影の表現に青い線が使われていることがわかります。黒を使わずに影を描こうとした印象派の実験が、ここに見えています
  • 19世紀パリの室内:床に敷かれた絨毯、家具の上に飾られた花瓶、背後に置かれた装飾的な家具。人物の背景というより、裕福な家庭の空気そのものが画面に写し取られています

ちなみにジョルジェットは、2年後に描かれた《シャルパンティエ夫人とその子どもたち》(メトロポリタン美術館)にも登場します。同じ少女の成長を別の名画で追える点も、この作品の面白さです。

この絵が日本にある理由

アーティゾン美術館のコレクションは、ブリヂストン創業者である石橋正二郎(1889–1976)が半世紀にわたって集めた作品が源になっています。石橋は郷里・久留米の画家、青木繁の作品を守ることから収集を始め、やがて日本近代洋画に加えて印象派を中心とする西洋絵画へと対象を広げました。1950年にニューヨーク近代美術館を訪れたことに刺激を受け、1952年1月8日、東京・京橋のブリヂストンビル2階にブリヂストン美術館を開館します。1956年には石橋財団を設立し、コレクションの大半を寄贈しました。美術館は2015年に建て替えのため閉館し、2020年1月18日、ミュージアムタワー京橋にアーティゾン美術館として生まれ変わっています。この肖像画そのものについては、モデルのジョルジェットが生涯手元に置き、1945年の没後に遺族が手放して、1987年にブリヂストン美術館の所蔵になったと伝えられます。

まとめ

4歳の少女の一瞬を、青の響きで包んだ一点です。堅苦しい注文肖像画ではなく、椅子の上でくつろぐ子どもの表情がそのまま残されているところに、ルノワールらしさがあります。東京駅からも歩ける京橋という立地なので、旅行の合間にも立ち寄れます。訪ねる前には、日時指定予約と「石橋財団コレクション選」の出品状況を公式サイトで確かめておくと安心です。