モネの睡蓮の池:アーティゾン美術館が持つ縦長の水面

モネの睡蓮の池:アーティゾン美術館が持つ縦長の水面

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1907年
所蔵
アーティゾン美術館(石橋財団)
所在地
東京都中央区

アーティゾン美術館が所蔵する、クロード・モネ1907年の油彩です。縦長のカンヴァスに、睡蓮と柳の反映が重なる水面だけを描いています。淡い朱色を帯びた水面は日没が近い時間を示すもの。現在は石橋財団コレクション選で展示されています。

クロード・モネの睡蓮は世界中の美術館にありますが、東京・京橋のアーティゾン美術館が持つ《睡蓮の池》は縦長のカンヴァスに描かれた一点です。水面に浮かぶ睡蓮と、周囲の柳の反映が重なり合い、上下の区別があいまいな空間が生まれています。現在は「石橋財団コレクション選」で公開されています。

睡蓮の池とは

クロード・モネ(1840-1926年)が1907年に描いた油彩・カンヴァスの作品で、大きさは100.6×73.5センチです。アーティゾン美術館を運営する公益財団法人石橋財団の所蔵品です。

美術館の解説によれば、本作は1907年に手がけられた縦長カンヴァスによる連作、およそ15点のうちの一点です。モネは同じ構図を保ったまま、昼間から日没にかけて刻々と変わる空の色を追いました。この作品の水面が淡い朱色を帯びているのは、日没が近づいている時間を表しているためです。

モネは1890年代からパリ近郊ジヴェルニーの自邸に水の庭をつくり、池に睡蓮を植え、太鼓橋を架けました。以後、この池は晩年まで画家の主要な主題であり続けます。睡蓮の連作はその集大成にあたり、対象を写すというより、光と時間そのものを描く試みへと進んでいきました。

岸辺も空も画面に描かれていないことに注目してください。見えているのは水面だけで、周囲の世界は反映としてのみ現れます。

どこで見られる?

  • 所蔵先 公益財団法人石橋財団(アーティゾン美術館)
  • 所在地 東京都中央区京橋1-7-2 ミュージアムタワー京橋。JR東京駅八重洲中央口、東京メトロ京橋駅、日本橋駅から徒歩5分です。
  • 展示状況 2026年6月23日から10月4日までの「石橋財団コレクション選」の出品作品リストに掲載され、5階展示室で展示されています。
  • 観覧料 入館料はウェブ予約チケットが一般1,200円、窓口販売チケットが一般1,500円。大学生・専門学校生・高校生(要ウェブ予約)と中学生以下は無料です。この料金で同時開催の展覧会もすべて見られます。開館時間は10時から18時まで、金曜日は20時まで。休館日は月曜日です。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 縦長のカンヴァス 睡蓮といえば横長の大画面を思い浮かべがちですが、本作は縦向きです。水面が手前から奥へ立ち上がるように見え、視線が自然と上下に動きます。
  • 朱色を帯びた水面 水そのものの色ではなく、空の色が映り込んだ結果として画面が染まっています。時間帯を色だけで語る、連作ならではの表現です。
  • 柳の反映が生む奥行き 池の周囲に立つ柳は直接描かれず、水面に映る姿としてだけ現れます。岸も空も描かない画面のなかに、幻想的な奥行きが立ち上がります。

この絵が日本にある理由

この作品を持つ石橋財団のコレクションは、ブリヂストンの創業者・石橋正二郎が集めた美術品を出発点としています。石橋は1952年1月、東京・京橋のブリヂストンビル内にブリヂストン美術館を開き、自らの収集品を一般に公開しました。1956年には財団が設立され、美術館の運営を引き継いでいます。

印象派の絵画は、この美術館が長く柱としてきた分野です。財団のコレクションは現在およそ3,000点にのぼり、2019年の改称と2020年のアーティゾン美術館開館を経て、いまも京橋で公開が続いています。日本の実業家が戦後まもない時期から集めた作品群が、そのまま東京の中心部に残っているわけです。

モネが庭づくりで日本の意匠に関心を寄せていたことを思えば、その池を描いた絵が東京で見られるのは巡り合わせのようにも感じられます。

まとめ

《睡蓮の池》は、モネが同じ池を前に時間の移ろいを追い続けた連作の一点です。縦長の画面、朱を帯びた水面、映り込むだけの柳という三つの手がかりを持って向き合うと、ただ美しい水景以上のものが見えてきます。東京駅から徒歩5分の場所で、ジヴェルニーの夕暮れに立ち会えます。