アリスカンの並木路、アルル:ゴッホと暮らした2か月にゴーギャンが描いた秋

アリスカンの並木路、アルル:ゴッホと暮らした2か月にゴーギャンが描いた秋

名画
作者
ポール・ゴーギャン
制作年
1888年
所蔵
SOMPO美術館
所在地
東京都新宿区

ゴーギャンがアルルでファン・ゴッホと共同生活を送っていた1888年10月に描いた風景画。東京・新宿のSOMPO美術館が所蔵します。古代ローマの墓地遺跡アリスカンを舞台にした一枚の見どころと、展示状況をまとめました。

ゴーギャンがファン・ゴッホとアルルで共同生活を送った2か月間。その最初期にあたる1888年10月に描かれた風景画が、東京・新宿のSOMPO美術館にあります。古代ローマの墓地遺跡を舞台にした、秋の色に満ちた一枚です。

《アリスカンの並木路、アルル》とは

ポール・ゴーギャン(1848〜1903年)が1888年に描いた油彩・カンヴァスで、寸法は72.5×91.5センチ。画面左下に署名と年記があります。描かれたのはアルルの南東に広がる「アリスカン」で、古代ローマ時代に築かれた墓地の跡です。アリスカンという地名は、ラテン語で楽園を意味する言葉に由来すると言われます。

ゴーギャンがアルルに到着したのは1888年10月下旬でした。ファン・ゴッホと暮らし始めてまもない時期に、ふたりはそろってアリスカンへ出かけ、それぞれ同じ場所を描いています。並木路と落ち葉を主役にしたゴーギャンの一枚は、その最初の成果のひとつです。

ふたりの共同生活は同年12月、ファン・ゴッホが自らの耳を切る事件によって突然終わりを迎えます。本作が描かれたのは、まだ制作をめぐる議論が刺激に満ちていた頃でした。共同生活の始まりの空気をとどめた作品として、美術史のうえでも特別な意味を持っています。

どこで見られる?

  • 所蔵先:SOMPO美術館
  • 所在地:東京都新宿区西新宿。JR新宿駅西口から徒歩約5分です
  • 展示状況・観覧料:同館は公式サイトで「常設展示はゴッホの《ひまわり》のみ」「コレクション専用の展示スペースはない」と明記しています。つまり本作は常設展示ではなく、企画展やコレクション関連の展示で公開されるときに見られます。現在展示中かどうかは、同館のコレクションデータベースで確認できます。開館時間は10時〜18時(金曜は20時まで、入場は閉館30分前まで)、休館日は月曜(祝日の場合は開館し翌平日休館)。観覧料は展覧会ごとに設定され、一般(26歳以上)当日券2,000円/事前購入券1,800円、25歳以下 当日券1,200円/事前購入券1,100円(小中高校生・障がい者手帳所持者は無料)、高校生以下と障がい者手帳をお持ちの方は無料です

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 赤く色づいた秋の並木路:主役は遺跡そのものではなく、色づいた葉と落ち葉に覆われた道です。手前から奥へ抜ける道筋が、画面に強い奥行きを与えています
  • 画面中央の石棺:並木路のかたわらには、古代の石棺が静かに置かれています。日常の風景の中に死者の記憶が同居する、この土地ならではの光景です
  • 目の粗いジュート地:ゴーギャンはアルル到着後まもなく、20メートルの目の粗い黄麻(ジュート)地を買い求め、ファン・ゴッホと分け合いました。本作もその布に描かれており、ざらついた地の質感が画面に独特の手ざわりを与えています

この絵が日本にある理由

SOMPO美術館の前身は、1976年に安田火災海上保険の本社ビル42階に開館した東郷青児美術館です。1978年に洋画家・東郷青児の遺族から345点の寄贈を受けたことで、コレクションの骨格ができました。

大きな転機は1987年です。同社がロンドンの競売でファン・ゴッホの《ひまわり》を約53億円で落札し、同年10月から公開を始めました。この《ひまわり》を軸に、ルノワール、ゴーギャン、セザンヌら印象派・ポスト印象派の作品が加えられていきます。《アリスカンの並木路、アルル》もこの流れの中で日本へ渡り、現在およそ640点というコレクションの一角を占めています。2020年7月には本社敷地内の新しい建物へ移り、館名もSOMPO美術館となりました。

まとめ

《アリスカンの並木路、アルル》は、ゴーギャンとファン・ゴッホという2人の画家が同じ場所に立っていた、ごく短い時間の証人です。新宿駅から歩いてすぐの美術館にありますが、常設展示ではない点に注意が必要です。訪ねる前に公式サイトやコレクションデータベースで展示の有無を確かめておくと、確実に出会えます。