ゴーギャン「家畜番の少女」:静岡にある、フレスコ画のような静けさ

ゴーギャン「家畜番の少女」:静岡にある、フレスコ画のような静けさ

名画
作者
ポール・ゴーギャン
制作年
1889年
所蔵
静岡県立美術館
所在地
静岡県静岡市

ゴーギャンがタヒチへ渡る前、フランスのブルターニュ地方で描いた1889年の油彩です。薄く平面的に塗られた画面は古いフレスコ画のような静けさをたたえています。東西の風景画を集める静岡県立美術館の収蔵品展で、大人500円で公開されることがあります。

ポール・ゴーギャンの《家畜番の少女》は、静岡県立美術館が所蔵する油彩画です。タヒチへ渡る前、フランスのブルターニュ地方で制作された1889年の作品で、豚の番をする少女と木立が、平坦で静かな画面にまとめられています。同館の収蔵品展のなかで、会期に応じて公開されます。

《家畜番の少女》とは

制作年は1889年。技法はキャンヴァスに油彩、大きさは73.0×92.0センチメートルです。フランス語の題は「Gardeuse de porcs」で、ゴーギャンの作品目録では354番にあたります。ゴーギャンは1886年以降ブルターニュ地方に滞在し、この地で総合主義と呼ばれる絵画を制作しました。本作もその時期の一枚です。

同館の解説によれば、規則的な筆づかいによって薄く平面的に塗られた画面は、古いフレスコ画の典雅さを思わせるといいます。また、豚と家畜番を木立の前方に配した構図は17世紀以来の伝統を受け継ぐもので、そうしたアルカイックな表現手法のなかに精神的な深みが表れているとされています。

印象派の画家たちが光のゆらぎを追いかけたのに対して、ゴーギャンはここで逆のことをしています。絵具は厚く盛らず、影も細かく追わず、色を面としてそっと置いていく。結果として、目の前の農村の一場面が、どこか壁画のような、時間の止まった眺めに変わっています。ゴーギャンが1891年にタヒチへ発つのは、この2年後のことです。

ゴーギャンはもともとパリで株式仲買の仕事をしていた人で、絵に専念すると決めたのは1883年、30代半ばのことでした。遅い出発だったぶん、印象派の技法をひととおり通り抜けたあと、そこから離れる方向へ急ぎ足で進んでいきます。ブルターニュを選んだのも、パリから遠く、古い信仰や習慣が残る土地に惹かれたからだと言われます。この絵の素朴さは、田舎の写生というより、画家が意識して選び取った様式なのだと考えると見え方が変わります。

どこで見られる?

  • 所蔵先:静岡県立美術館(収蔵品展で公開)
  • 所在地:静岡県静岡市駿河区谷田53-2
  • 展示状況・観覧料:収蔵品展は会期ごとに内容を入れ替えて開催されます。観覧料は収蔵品展が大人500円(20名以上の団体は400円)で、大学生以下と70歳以上は無料。年間パスポートは900円です。開館時間は10時から17時30分(展示室への入室は17時まで)、休館日は月曜日(祝日・振替休日の場合は開館し翌日休館)と年末年始、展示替えなどのための臨時休館日です。
  • 展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 薄く平面的に塗られた画面:規則的な筆づかいで色が面として置かれ、古いフレスコ画のような典雅さが生まれています。近くで見ると絵具の薄さに驚きます。
  • 木立の前に配された豚と少女:手前に家畜と番人、その奥に木立という構図は、17世紀以来の風景画の伝統を踏まえたものだと同館は説明しています。
  • タヒチ以前のゴーギャン:南の島のイメージが強い画家ですが、ここにあるのはブルターニュの畑と木立です。あの平面的な様式が渡航前にすでに固まっていたことが分かります。

この絵が日本にある理由

静岡県立美術館は、17世紀以降の東西の山水画・風景画を収集の大きな柱に据えている美術館です。遠州から駿河湾、伊豆半島へと続く長い海岸線をもつ土地柄にちなんだ方針で、ロイスダール、ターナー、モネといった西洋の画家から、狩野探幽、池大雅、横山大観といった日本の画家までを、風景というひとつの物差しで並べて見せています。

《家畜番の少女》も、その風景画コレクションの一点としてこの館にあります。西洋絵画を「有名画家の名前」で集めるのではなく、風景という主題で東西を横断させるという考え方は、日本の美術館のなかでもはっきりした個性です。ロダン館の彫刻や富士山を描いた作品群と同じ建物のなかで、ブルターニュの畑を見ることになります。

まとめ

《家畜番の少女》は、ゴーギャンがタヒチへ渡る前、ブルターニュで到達した平面的な絵画をよく示す1889年の油彩です。薄く塗られた色面と、木立の前に置かれた豚と少女の構図が見どころで、静岡県立美術館の収蔵品展で大人500円で見られます。東西の風景画を並べて見せる同館のなかで、この一枚がどんな位置にあるのかを考えながら歩くと、より面白く見られるはずです。