りんごとナプキン:「りんご1つでパリを驚かせる」と語ったセザンヌの静物画

りんごとナプキン:「りんご1つでパリを驚かせる」と語ったセザンヌの静物画

名画
作者
ポール・セザンヌ
制作年
1879〜80年
所蔵
SOMPO美術館
所在地
東京都新宿区

セザンヌが1879〜80年に描いた静物画で、東京・新宿のSOMPO美術館が所蔵します。りんごと白い布を別々の視点から捉えた画面は、写実を超えた「構成」への挑戦。見どころと展示状況、日本へ渡った経緯をまとめました。

「りんご1つでパリを驚かせてみせる」。そう語ったと伝えられるポール・セザンヌが、まさにりんごを主役に据えて描いた静物画が、東京・新宿のSOMPO美術館にあります。一見おだやかな画面の中で、絵画の常識が静かに書き換えられています。

《りんごとナプキン》とは

ポール・セザンヌ(1839〜1906年)が1879〜80年に手がけた油彩・カンヴァスで、寸法は49.2×60.3センチです。長持のような箱の上にいくつものりんごが並び、白い布がそこへ無造作にかけられています。背景に見える植物のような模様は、部屋の壁紙の柄です。

セザンヌは当初、光と色彩を重んじる印象派の一員として出発しました。しかし次第に、目に映るものをそのまま写すのではなく、「そこにある形」そのものへと関心を移していきます。本作は、その転換期に位置づけられる作品です。

セザンヌは生涯にわたって静物画を描き続け、とりわけりんごを繰り返し画面に置きました。腐りにくく、置き方を自由に変えられ、何日でもモデルとして働いてくれる。動かないものを前にして構図を練り上げる作業こそ、彼が求めた絵画のかたちでした。

どこで見られる?

  • 所蔵先:SOMPO美術館
  • 所在地:東京都新宿区西新宿。JR新宿駅西口から徒歩約5分です
  • 展示状況・観覧料:同館は公式サイトで「常設展示はゴッホの《ひまわり》のみ」「コレクション専用の展示スペースはない」と明記しています。本作も常設展示ではなく、企画展やコレクション関連の展示に合わせて公開されます。現在展示中かどうかは同館のコレクションデータベースで確認できます。開館時間は10時〜18時(金曜は20時まで、入場は閉館30分前まで)、休館日は月曜(祝日の場合は開館し翌平日休館)。観覧料は展覧会ごとに設定され、たとえば一般(26歳以上)2,000円(事前購入券1,800円)、25歳以下1,200円(同1,100円)、小中高校生と障がい者手帳をお持ちの方は無料です

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • ひとつずつ視点が違う:りんごも布も、それぞれ別の角度から見た姿として描かれています。一点透視の遠近法に従っていないため、じっと見ると置かれ方がどこか不自然に感じられます
  • 直線を意識した配置:りんごは画面の対角線などの直線上に並べられています。偶然そこにあるように見えて、実は構図が緻密に組み立てられているのです
  • 質感より「形」:果物のみずみずしさや布のやわらかさは、あえて強調されていません。セザンヌが追ったのは触感の再現ではなく、量感を持つ立体として画面に置かれた「もの」の存在でした

この絵が日本にある理由

SOMPO美術館は、1976年に安田火災海上保険の本社ビル42階で東郷青児美術館として開館しました。1978年に洋画家・東郷青児の遺族から345点の寄贈を受け、これがコレクションの出発点となります。

その後、1987年にファン・ゴッホの《ひまわり》を約53億円で落札したことを機に、西洋近代絵画の収集が本格化します。ルノワール、ゴーギャン、そしてセザンヌの作品が順に加わり、コレクションは現在およそ640点。《りんごとナプキン》も、この時期に日本へ渡った一点です。2020年7月には本社敷地内の新館へ移転し、館名もSOMPO美術館へと改められました。同じ館にファン・ゴッホの《ひまわり》があることを思えば、静物画という主題を通じて、ほぼ同時代を生きた2人の画家のアプローチを見比べられる、日本でも数少ない環境だと言えます。

まとめ

《りんごとナプキン》は、印象派から「構成する絵画」へと踏み出したセザンヌの歩みを、りんご数個で示してみせる作品です。新宿駅からすぐの立地は魅力ですが、常設展示ではないため、いつでも見られるわけではありません。公式サイトやコレクションデータベースで展示の有無を確かめてから出かけましょう。