アザミの花:ゴッホが最期の夏に描いた野の花の静物
- 作者
- フィンセント・ファン・ゴッホ
- 制作年
- 1890年
- 所蔵
- ポーラ美術館
- 所在地
- 神奈川県箱根町
ゴッホが1890年6月にオーヴェールで描いた《アザミの花》は、ポーラ美術館(神奈川県箱根町)の所蔵品です。浮世絵の影響を示す輪郭線とうねる絵具が、亡くなる1か月ほど前の画家のまなざしを伝えます。2026年8月時点では展示室5で公開中です。
くすんだ赤い壺に、とげだらけのアザミが無造作に生けられています。フィンセント・ファン・ゴッホが1890年に描いた《アザミの花》は、神奈川県箱根町のポーラ美術館が所蔵する一点です。ゴッホが亡くなるわずか1か月ほど前に描かれた、静かで張りつめた花の絵です。
《アザミの花》とは
制作年は1890年、技法は油彩・カンヴァス、大きさは40.8×33.6センチメートルです。ポーラ美術館での作品番号は016-0020とされています。
ファン・ゴッホは1890年、パリ近郊のオーヴェール=シュル=オワーズに移り住み、精神科医ガシェの治療を受けながら、およそ70点の作品を制作しました。ポーラ美術館の解説によれば、本作は1890年6月16日または17日に、ガシェ医師の家でモティーフを見つけて描いた数点の野花の静物画のうちの1点です。テーブルや花瓶を区切る輪郭線には日本の浮世絵版画の影響がうかがえ、アザミの葉や花瓶に置かれたタッチは、線と色彩、そして絵具の質感がもたらす効果を追い求めたゴッホの姿勢をよく示しています。ゴッホは同じ年の7月27日に自らの胸をピストルで撃ち、その2日後に亡くなりました。
オーヴェールでのおよそ70点は、亡くなるまでの2か月ほどのあいだに描かれたものです。ほぼ一日1点という、たいへんな速さで筆をとっていたことになります。《アザミの花》はその濃密な日々のさなかに生まれた小品です。派手さはありませんが、線と色と絵具の厚みという、ゴッホが最後まで手放さなかった三つの関心がここに揃っています。
どこで見られる?
- 所蔵先:ポーラ美術館
- 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285(富士箱根伊豆国立公園内)
- 展示状況:2026年8月の時点で、公式サイトの作品ページに「展示中」と表示され、展示室5で公開されています。ただし通年の常設展示ではなく、ポーラ美術館は所蔵品を入れ替えながら公開しています
- 観覧料:大人2,200円、大学・高校生1,700円、中学生以下無料。障害者手帳をお持ちの本人と付添者1名までは1,100円です
- 開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)。展示替えのための臨時休館があります
展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。
見どころ3選
- 輪郭線:テーブルや花瓶のふちにはっきりとした線が引かれています。ゴッホが愛した日本の浮世絵版画の影響がここに表れています
- アザミという主題:華やかな花ではなく、道ばたに生えるとげのある野草を選んだところに、身近な自然を見つめ続けたゴッホらしさがあります
- 絵具の厚み:葉のぎざぎざも壺の丸みも、うねるような筆のあとで作られています。近くで見ると絵具そのものが盛り上がっているのがわかります
この絵が日本にある理由
ポーラ美術館は、ポーラ創業家2代目の鈴木常司が40数年かけて収集した作品を母体として、2002年9月6日に箱根・仙石原で開館しました。収蔵品は西洋絵画から日本の洋画、日本画、東洋陶磁、ガラス工芸、化粧道具まで幅広く、印象派とポスト印象派の絵画はその中心をなしています。
建物は「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに設計され、高さを地上8メートルに抑えて多くを地下に置き、森にとけこむ姿になっています。展示室には独自に開発した照明システムが採用され、作品がもっとも美しく見えるよう工夫されています。
ゴッホの油彩は世界的にも点数が限られ、日本の美術館が所蔵する例は多くありません。しかもこの《アザミの花》には、浮世絵の輪郭線の影響という日本とのつながりがはっきり残っています。日本の版画に学んだ画家の絵が、いま日本の森のなかの美術館におさまっている。そのつながりも、実物の前に立つときに思い出しておきたいところです。
まとめ
《アザミの花》は、ゴッホが最晩年のオーヴェール時代に、ガシェ医師の家で見つけた野草を描いた小さな静物画です。ポーラ美術館の所蔵で、2026年8月時点では展示室5で公開されています。展示替えのある美術館なので、訪ねる前に公式サイトの作品ページで展示状況を確かめておくとよいでしょう。



