ひまわり(SOMPO美術館):アジアで唯一見られるゴッホの黄色い一点

ひまわり(SOMPO美術館):アジアで唯一見られるゴッホの黄色い一点

名画
作者
フィンセント・ファン・ゴッホ
制作年
1888年
所蔵
SOMPO美術館
所在地
東京都新宿区

ゴッホが1888年のアルルで描いた《ひまわり》で、東京・新宿のSOMPO美術館が所蔵します。ゴッホの《ひまわり》をアジアで見られるのはここだけ。1945年に芦屋で焼失したもう一枚の記憶とも結びつく作品です。

フィンセント・ファン・ゴッホの《ひまわり》は、1888年に南フランスのアルルで描かれた油彩画です。花瓶に生けたひまわりという主題は複数描かれましたが、そのうちの一点が東京・新宿のSOMPO美術館にあります。ゴッホの《ひまわり》を見ることができるアジア唯一の美術館として知られる存在です。

《ひまわり》(SOMPO美術館蔵)とは

ゴッホは1888年2月、パリを離れて南フランスのアルルへ向かいました。画家たちが共同で制作する場をつくるという構想を抱いていた彼は、到着を待ちわびていたゴーギャンの部屋を飾るために、ひまわりの絵を描きます。技法は油彩・キャンヴァス、画面はおよそ縦100センチ、横76センチです。

SOMPO美術館が所蔵する一点は、1888年11月下旬から12月上旬頃に描かれたと考えられています。同年8月に描かれた「黄色い背景のひまわり」の最初の作品(ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵)をもとにしたもので、制作時期はゴーギャンとの共同生活がすでに始まっていた頃にあたります。基本的な色と構図はロンドンの作品と共通しますが、筆づかいや色調には違いがあり、ゴッホが単に写しをつくったのではなく、あらためて入念に描き直したことがうかがえます。

どこで見られる?

  • 所蔵先:SOMPO美術館
  • 所在地:東京都新宿区西新宿1-26-1
  • 展示状況・観覧料:同館の常設展示は《ひまわり》のみで、コレクション専用の展示室はありません。展示フロアの最後の一角に常設展示されているため、開催中の展覧会とあわせて鑑賞する形になり、《ひまわり》だけを見ることはできません。観覧料は展覧会ごとに設定されます。開館時間は10時〜18時(金曜日は20時まで、入場は閉館30分前まで)、休館日は月曜日(祝日・振替休日の場合は開館し翌平日が休館)、展示替期間、年末年始です。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 黄色の上に黄色を重ねる挑戦:背景も、テーブルも、花瓶も、そして花も、画面のほとんどが黄色系でできています。補色の対比に頼らず、明るさと筆づかいの差だけで手前と奥を描き分けるという、かなり無謀な試みです。実物の前に立つと、ひとくちに黄色といっても、レモン色から山吹色、褐色に近い黄土色まで驚くほど幅があることがわかります。
  • ひと束のなかにある時間の流れ:大きく開ききった花、うつむきかけた花、花びらが落ちて種の部分がむき出しになった花が、同じ花束のなかに同居しています。満開の華やかさだけを描くのではなく、盛りと衰えを一枚に収めているところに、この絵の底の深さがあります。
  • ロンドンの一点との「違い探し」:本作はロンドン・ナショナル・ギャラリーの作品をもとにしています。図版でも構いませんので、二枚を見比べてみてください。同じ構図なのに、筆の運びや色の温度が違う。ゴッホがこの主題をどれほど真剣に考え抜いていたかが、その差から伝わってきます。

この絵が日本にある理由

じつは日本には、もう一枚の《ひまわり》がありました。1919年(大正8年)、大阪で綿織物会社を営んだ実業家の山本顧彌太が、8万フランでゴッホの《ひまわり》を購入します。武者小路実篤に傾倒していた山本は、白樺派が構想していた白樺美術館の建設のためにこの絵を手に入れたのでした。ところが美術館の構想は実現せず、絵は芦屋の山本邸に置かれたままになります。そして1945年8月5日深夜から6日未明にかけての阪神大空襲で、山本邸は焼夷弾により全焼。《ひまわり》は応接室に飾られたまま灰になりました。

1987年に安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)が創業100周年の記念事業としてゴッホの《ひまわり》を購入し、その後もゴーギャン、セザンヌなどの印象派・ポスト印象派の作品を加えていきます(ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》は1989年1月、セザンヌ《りんごとナプキン》は1990年1月に一般公開)。同年10月には一般公開が始まりました。落札額について公式サイトに記載はありませんが、報道では2,250万ポンド(当時の為替で約53億円)と伝えられ、世界的な話題となっています。日本が一度失った《ひまわり》は、こうしてもう一度この国にやってきたのです。

まとめ

SOMPO美術館の《ひまわり》は、ゴーギャンを迎えたアルルの日々に描かれた、黄色だけで構成された挑戦的な一枚です。そして芦屋で焼けたもう一枚の記憶を背負う、日本にとって特別な意味をもつ作品でもあります。新宿駅から歩いて行ける場所でこの絵に会えること自体が、めったにない幸運だといえます。