ルノワール《赤い服の女》:八王子で会える「真珠色の時代」への入口

ルノワール《赤い服の女》:八王子で会える「真珠色の時代」への入口

名画
作者
ピエール=オーギュスト・ルノワール
制作年
1892年頃
所蔵
東京富士美術館
所在地
東京都八王子市

東京富士美術館(東京都八王子市)が所蔵するルノワール《赤い服の女》は1892年頃の油彩画。赤い服と黄色い帽子の若い女性を描き、輪郭がやわらいで光に溶けていく「真珠色の時代」への転換を示す一枚です。2026年秋からは巡回展「わたしたちのルノワール」に貸し出されます。

東京富士美術館(東京都八王子市)が所蔵するピエール=オーギュスト・ルノワールの《赤い服の女》は、1892年頃に描かれた油彩画です。赤い服をまとい黄色い帽子をかぶった若い女性を、輪郭をやわらげた筆づかいでとらえています。ルノワールが新しい画風へ踏み出していく時期の一枚で、都心から少し足をのばせば出会える西洋絵画の名品です。

《赤い服の女》とは

作者はフランス印象派を代表する画家ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841〜1919年)です。制作年は1892年頃、技法は油彩・カンヴァス、寸法は65.4×54.5センチで、人物画としては親密さを感じるサイズにおさまっています。

東京富士美術館の作品解説によれば、この絵には「赤い色」「美しい服」「若い女性の肌」「穏やかさ」という、ルノワールが好んで描き続けた要素がそろっています。頭にのせられた黄色い帽子も、彼の作品にくり返し登場する大切な脇役です。

この絵が描かれたとみられる1890年代前半は、ルノワールが輪郭を明確に描く「古典の時代」から、のちに「真珠色の時代」と呼ばれる画風へ移っていく転換期にあたります。同館は、輪郭がやわらぎ、衣服が震えるような色調で描かれ、人物が背景の光のなかに溶け込んでいく点に、その変化があらわれていると説明しています。

ルノワールというと《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》のような群像や、豊満な裸婦を思い浮かべる方も多いかもしれません。けれども彼が生涯もっとも数多く描いたのは、名もない女性たちの半身像でした。特定の誰かの記録としてではなく、色と光を試すための存在として女性を描き続けたところに、この画家の一貫した関心があります。《赤い服の女》も、その系譜のなかに置かれる一枚です。

どこで見られる?

  • 所蔵先 東京富士美術館
  • 所在地 東京都八王子市谷野町492-1
  • 展示状況 ふだんは同館の常設展示「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」で公開されますが、2026年秋からは巡回展「わたしたちのルノワール」に貸し出されます。2026年9月22日から11月15日は静岡市美術館、11月23日から2027年1月17日は大分県立美術館、2027年4月6日から5月30日は岡山県立美術館です。八王子で確実に会えるのは、同展が東京富士美術館へ巡回する2027年1月26日から3月28日の会期になります。
  • 観覧料 東京富士美術館は会期ごとに料金が変わります。2026年10月3日から12月27日の会期は大人1,500円、大学・高校生900円、中学・小学生500円で、開催中のすべての展示を観覧できます。オンラインチケットなどの割引もあります。
  • 開館時間・休館日 10時から17時(受付は16時30分まで)。月曜(祝日・振替休日の場合は開館し、翌火曜が振替休館)、年末年始、展示替期間は休館です。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 赤と黄のひびき 画面の主役である赤い服に、黄色い帽子が明るいアクセントを添えます。強い色をぶつけながらも刺々しくならない配色は、色彩の画家ルノワールならではです。
  • 溶けていく輪郭 人物の縁取りははっきり引かれず、背景の光とゆるやかにつながります。かたちを線で閉じ込めない描き方が、画面全体をやわらかく見せています。
  • 震えるような筆触 衣服の面は一色で塗られておらず、少しずつ調子の違う色が重ねられています。近づくと絵具の動きが、離れると布の質感が見えてくるのが面白いところです。

この絵が日本にある理由

東京富士美術館は1983年、東京都八王子市に開館した私立美術館です。日本と東洋の美術に加え、西洋絵画の収集に力を入れてきたことで知られ、16世紀イタリア・ルネサンスから20世紀の近代美術まで、およそ400年にわたる油彩画の流れをたどれるコレクションを築いてきました。

その厚みは、館蔵品による巡回展「西洋絵画400年の旅」が全国を回っていることからもうかがえます。ティントレット、ヴァン・ダイク、ターナーといった古典から、モネ、セザンヌ、モディリアーニまでが並ぶなかで、《赤い服の女》は印象派の肖像画を代表する存在として紹介されています。八王子という立地は都心からやや離れますが、その分ゆったりと名画に向き合える環境がそろっています。

まとめ

ルノワール《赤い服の女》は、1892年頃の油彩画で、東京富士美術館が所蔵しています。ただし2026年秋から2027年春にかけては巡回展「わたしたちのルノワール」に出ているため、八王子ではなく静岡・大分・岡山の各館が会える場所になります。訪ねる前に公式サイトで所在を確かめてください。画家が新しい画風へ踏み出す瞬間を、日本で確かめられる貴重な一点です。