泉による女(ルノワール):大原美術館が伝える、73歳の巨匠の裸婦像

泉による女(ルノワール):大原美術館が伝える、73歳の巨匠の裸婦像

名画
作者
ピエール=オーギュスト・ルノワール
制作年
1914年
所蔵
大原美術館
所在地
岡山県倉敷市

ルノワールが73歳の1914年に描いた裸婦像で、岡山県倉敷市の大原美術館が所蔵します。大原孫三郎が支援した洋画家・満谷国四郎を介して日本にわたったと伝えられる一枚です。2026年8月時点では貸出中で、特別展として全国5会場を巡回しています。

ピエール=オーギュスト・ルノワールが1914年に描いた《泉による女》は、岡山県倉敷市の大原美術館が所蔵する裸婦像です。画家が73歳を迎えた最晩年の作で、日本人の手を通じて日本にもたらされた一枚として知られています。2026年8月時点では貸出中で、全国5会場をめぐる特別展で公開されています。

《泉による女》とは

大原美術館の作品データによれば、制作年は1914年、技法は油彩・カンヴァス、寸法は92.5×73.7センチです。英題は「Woman by Spring」で、泉のかたわらにたたずむ女性の裸体を描いています。ルノワール(1841〜1919年)は晩年、リウマチに苦しみながらも南フランスで制作を続け、豊かな肉づきの裸婦像を数多く残しました。本作もその系譜に連なる一点です。

1914年といえば、ルノワールが亡くなる5年前にあたります。輪郭線をきっぱりと引くのではなく、赤みを帯びた肌の色と背景の緑を溶け合わせるようにして形を浮かび上がらせる描き方は、この時期の画家の特徴です。縦92.5センチという画面は、大原美術館が所蔵する西洋絵画のなかでも堂々とした存在感を放ちます。ルノワールは初期には印象派の一員として都市の人々や光あふれる戸外を描きましたが、晩年には裸婦という古典的な主題に立ち返り、豊かな肉体と自然が一体になった画面を追い求めました。《泉による女》はまさにその到達点にあたる時期の作品です。

どこで見られる?

  • 所蔵先:大原美術館
  • 所在地:岡山県倉敷市中央1-1-15
  • 展示状況:2026年8月時点では貸出中です。同館公式サイトの「現在貸出中の作品」によれば、特別展「わたしたちのルノワール」に出品され、熊本県立美術館(2026年7月18日〜9月13日)を皮切りに、静岡市美術館、大分県立美術館、東京富士美術館、岡山県立美術館と2027年5月まで全国5会場を巡回します。大原美術館本館の展示作品リスト(2026年7月15日版)には含まれていません
  • 観覧料:一般2,000円、高校・中学・小学生500円、未就学児無料。開館時間は3月から11月が午前9時から午後5時(最終入館午後4時30分)、12月から2月は午前9時から午後3時(最終入館午後2時30分)です

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 晩年ならではの肌の色:赤みを帯びた暖かな肌の色が画面を支配します。細部を描き込むよりも、色の重なりで量感を出そうとした最晩年の描き方が味わえます。
  • 泉と緑の背景:泉のほとりという設定が、人物と自然を一続きの色彩としてつなぎます。人体を風景のなかに溶け込ませる晩年のルノワールらしい主題です。
  • 日本にもたらされた経緯:この絵は、大原孫三郎が支援した洋画家・満谷国四郎を介して日本にわたったと伝えられます。作品そのものだけでなく、その来歴も鑑賞の手がかりになります。

この絵が日本にある理由

大原美術館は1930年、倉敷の実業家・大原孫三郎(1880〜1943年)によって設立された、日本で最初の西洋美術を中心とする私立美術館です。孫三郎は画家で友人の児島虎次郎(1881〜1929年)に三度の渡欧を促し、「日本の若い画学生に本物の西洋絵画を見せたい」という虎次郎の願いを資金面で支えました。虎次郎が選んだエル・グレコ、ゴーギャン、モネ、マティスらの作品が、いまも同館の中核をなしています。

《泉による女》は、孫三郎が援助していた岡山出身の洋画家・満谷国四郎を通じて入手されたと伝えられる作品です。当時のヨーロッパで存命の巨匠から直接作品を得ることは容易ではなく、日本人画家たちの現地でのつながりが、そのまま倉敷のコレクションになっていきました。西洋美術館がまだ存在しなかった時代の日本に、ルノワールの晩年作がわたってきた背景には、こうした人と人の縁があります。

まとめ

《泉による女》は、ルノワール最晩年の充実と、大原コレクションの成り立ちの両方を物語る作品です。2026年8月時点では倉敷を離れて巡回中ですが、日本国内で見られることに変わりはありません。むしろ、熊本や静岡、大分、東京、岡山と各地を回るこの機会に、地元の会場で対面できる人も多いはずです。巡回が終われば倉敷の大原美術館に戻ります。訪ねる前に、大原美術館や巡回先の公式サイトで最新の展示・貸出状況を確認しておくと安心です。