バルコニーの女と子ども:モリゾが自宅から描いた1872年のパリ

バルコニーの女と子ども:モリゾが自宅から描いた1872年のパリ

名画
作者
ベルト・モリゾ
制作年
1872年
所蔵
アーティゾン美術館(石橋財団)
所在地
東京都中央区

アーティゾン美術館が所蔵する、ベルト・モリゾ1872年の油彩です。パリの自邸のバルコニーから、女性と子どもが街を見下ろす情景を描いています。モデルは画家の姉と姪、背景は当時のパリの実景。現在は石橋財団コレクション選で展示されています。

東京・京橋のアーティゾン美術館に、印象派の画家ベルト・モリゾの《バルコニーの女と子ども》があります。パリの自宅のバルコニーから、着飾った女性と小さな子どもが街を見下ろす場面を描いた作品です。現在は「石橋財団コレクション選」の一点として展示されています。

バルコニーの女と子どもとは

ベルト・モリゾ(1841-1895年)が1872年に描いた油彩・カンヴァスの作品で、大きさは61×50センチです。アーティゾン美術館を運営する公益財団法人石橋財団の所蔵品です。

舞台になっているのは、パリ西部のシャイヨー宮に近いバンジャマン・フランクリン通りにあったモリゾの自邸です。バルコニーの手すり越しに、トロカデロ庭園、セーヌ川、シャン・ド・マルス公園が広がり、遠くにアンヴァリッドのドームまで見えています。美術館の解説によれば、女性のモデルはモリゾの姉、子どものモデルはその娘とされています。

モリゾは印象派のなかでは数少ない女性画家のひとりです。1874年の第一回印象派展に参加し、以後もほとんどの回に出品しました。同時代の女性画家は戸外の制作や画塾での修業に制約が多く、描ける主題も限られていました。モリゾが家庭と身のまわりを主題に選び続けたのは、そうした条件のなかで自分の画題を確立した結果でもあります。

母子や子どもを描いた作品には、家族を内側から見た者だけが持てる距離感があり、美術館の解説もその繊細さを評価しています。

どこで見られる?

  • 所蔵先 公益財団法人石橋財団(アーティゾン美術館)
  • 所在地 東京都中央区京橋1-7-2 ミュージアムタワー京橋。JR東京駅八重洲中央口、東京メトロ京橋駅、日本橋駅から徒歩5分です。
  • 展示状況 2026年6月23日から10月4日までの「石橋財団コレクション選」の出品作品リストに掲載され、5階展示室で展示されています。
  • 観覧料 入館料はウェブ予約チケットが一般1,200円、窓口販売チケットが一般1,500円。大学生・専門学校生・高校生(要ウェブ予約)と中学生以下は無料です。この料金で同時開催の展覧会もすべて見られます。開館時間は10時から18時まで(入館は閉館の30分前まで)、祝日を除く金曜日は20時まで。休館日は月曜日です。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 手すりが区切る二つの世界 画面を横切るバルコニーの手すりが、人物のいる私的な場所と、その向こうに広がる都市とを静かに切り分けています。
  • 実在の風景としてのパリ 背景はただの町並みではありません。トロカデロ庭園やアンヴァリッドのドームが描き込まれ、1872年のパリの一角がそのまま記録されています。
  • 家族を見つめるまなざし モデルは画家の姉と姪です。職業モデルではなく身近な人を描いたことが、構えのない自然な姿勢や視線の向きにつながっています。

この絵が日本にある理由

アーティゾン美術館の母体である石橋財団のコレクションは、ブリヂストンの創業者・石橋正二郎が集めた作品を核にしています。石橋は1952年1月、東京・京橋のブリヂストンビル内にブリヂストン美術館を開設し、自身の収集品を一般に公開しました。1956年には財団が設立され、美術館の運営を引き継いでいます。

美術館は2019年にアーティゾン美術館へと改称し、2020年、同じ京橋のミュージアムタワー京橋で新しい施設として開館しました。マネやルノワールをはじめとする印象派の作品は、ブリヂストン美術館の時代から一貫してコレクションの中核であり続けています。

石橋財団のコレクションは現在およそ3,000点にのぼります。近年は印象派の女性画家にも収集の幅を広げており、モリゾのこの一点も、京橋で公開される印象派の系譜に連なる作品です。

まとめ

《バルコニーの女と子ども》は、印象派の女性画家が自宅の高さから見たパリを、家族とともに切り取った作品です。手すりの内と外、人物と都市という対比を意識すると、静かな画面がぐっと立体的に見えてきます。東京駅から歩ける距離で、1872年のパリをのぞいてみてください。