ジヴェルニーの積みわら(モネ):ポーラ美術館で見る、連作誕生前夜の光

ジヴェルニーの積みわら(モネ):ポーラ美術館で見る、連作誕生前夜の光

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1884年
所蔵
ポーラ美術館
所在地
神奈川県箱根町

モネが1884年に描いた《ジヴェルニーの積みわら》は、神奈川県箱根町のポーラ美術館が所蔵する油彩画です。のちの「積みわら」連作へ向かう出発点にあたる一枚で、牧草地に降りそそぐ光を明暗の強い対比でとらえています。2026年8月時点では展示室1で公開中です。

クロード・モネが1884年に手がけた《ジヴェルニーの積みわら》は、神奈川県箱根町のポーラ美術館が所蔵する油彩画です。のちに画家の代名詞となる「積みわら」連作へ向かう、その出発点にあたる一枚として知られています。箱根の森のなかで、モネが光の探究に踏み出した瞬間に立ち会える作品です。

《ジヴェルニーの積みわら》とは

モネは1883年4月末、パリの北西およそ70キロ、セーヌ河とエプト河が合流する地点にある小村ジヴェルニーへ移り住みました。以後この村を拠点に、生涯の後半をここで過ごすことになります。1884年から1886年にかけて、家の南に広がる牧草地に積み上げられた麦藁を主題に8点の作品を描いており、本作もそのうちの1点です。画面には三つの積みわらが並び、その背後にはポプラ並木が見えます。制作年は1884年、技法は油彩・カンヴァスで、寸法は66.1×81.3センチ。ポーラ美術館の作品番号は006-0207です。

同館の解説によれば、モネはこの絵で、日常的な風景に降りそそぐ光を明暗の強いコントラストによって表現しています。描く対象を限定し、構図を単純化したうえで光の効果を探るという姿勢は、のちの制作に直結するものでした。実際モネはこののち、脱穀前の麦穂を積み上げた紡錘形の積みわらを主題に、さまざまな天候や時間によって移ろう光をあざやかな色彩でとらえていきます。そして1891年5月、15点からなる「積みわら」の連作をデュラン=リュエル画廊で発表して大成功を収め、連作の時代へと入っていきました。

どこで見られる?

  • 所蔵先:ポーラ美術館(作品番号006-0207)
  • 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
  • 展示状況:公式サイトの「展示場所から探す」では、展示室1に展示中と案内されています(2026年8月時点)
  • 観覧料:大人2,200円、大学・高校生1,700円、中学生以下無料。開館時間は午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)で、原則として年中無休です

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 三つの積みわらとポプラ並木:横長の画面に積みわらが並び、その奥をポプラ並木が水平に区切ります。モティーフを絞り込んだ、静かで簡潔な構図です。
  • 明暗の強いコントラスト:積みわらの日なたと影がはっきり描き分けられ、牧草地に降りそそぐ光の強さが伝わります。色彩を細かく分解するのではなく、光と影の対比で風景をつかもうとした段階の絵です。
  • 連作前夜という位置づけ:本作は1891年の連作発表より7年前の作品です。のちの連作が脱穀前の麦穂を積み上げた紡錘形の山を主題にしているのに対し、本作が描くのは牧草地に積み上げられた麦藁です。同じ「積みわら」でも見つめている対象が違い、方法もまだ確立していません。連作という発想にたどり着く直前の姿を、実物で確かめられます。

この絵が日本にある理由

ポーラ美術館は2002年9月6日に開館しました。そのコレクションは、ポーラ創業家2代目の鈴木常司(1930年生まれ、2000年没)が40数年をかけて集めたものです。西洋絵画、日本の絵画、ガラス工芸、東洋陶磁、化粧道具などを含めて総数は約1万点にのぼり、そのうち核となる西洋近代絵画は約400点を数えます。

鈴木は当初、日本の近代洋画やフランスの現代絵画を購入していましたが、美術館の建設を構想するようになってから、印象派や20世紀の西洋絵画へと収集の軸足を移していきました。《ジヴェルニーの積みわら》もそうしたなかで日本にもたらされた一点です。同館は国内有数のモネ・コレクションを持ち、展示室1にはほかにも《散歩》《ルーアン大聖堂》《睡蓮の池》など複数のモネ作品が並んでいます。

まとめ

《ジヴェルニーの積みわら》は、モネが「同じものを繰り返し描く」という方法にたどり着く直前の姿を伝える作品です。派手さはありませんが、光と影をどう画面に定着させるかという課題に真正面から取り組んだ、地味で誠実な一枚といえます。箱根の自然に囲まれたポーラ美術館で、のちのルーアン大聖堂や睡蓮の絵と並べて味わえるのは、日本ならではの体験です。強羅や仙石原まで足を延ばす機会があれば、ぜひ展示室1に立ち寄ってみてください。