オラファー・エリアソン:光と天候を展示室に持ち込む
霧、虹、氷、人工の太陽。エリアソンは自然現象そのものを展示室に運び込み、見る人の知覚を作品の一部にしてきました。金沢21世紀美術館には色ガラスのパビリオンが恒久展示され、東京の麻布台ヒルズにも大型の作品があります。
オラファー・エリアソン(1967-)は、光・色・霧・水といった自然現象を素材にするデンマークの現代美術作家です。作品の前に立った人がどう感じ、どう動くかまでを含めて一つの作品と考えている点に特徴があります。
経歴
1967年、デンマークのコペンハーゲンに生まれました。両親はアイスランド出身で、少年期から夏をアイスランドで過ごしています。氷河、火山、苔むした溶岩、白夜の光といった、極端で剥き出しの自然が原体験になりました。
1989年から1995年までコペンハーゲンの王立デンマーク美術アカデミーで学び、卒業後はベルリンに拠点を移します。現在のスタジオ・オラファー・エリアソンは、建築家・技術者・研究者・料理人までを抱える大所帯で、作品の制作と同時に気候変動やエネルギー問題に関わるプロジェクトも動かしています。
作風と手法
エリアソンの作品は、種明かしを隠しません。霧を出す装置も、光源も、鏡の裏側も、見ようと思えば見えるようになっています。それでも人は目の前の現象に引き込まれてしまう。「自分が今、何かを感じている」というその状態自体に気づかせることが目的だからです。
本人はこれを「見ることを見る」と表現しています。作品は完成品ではなく、観客が入ってはじめて動き出す装置なのです。
代表作
- ウェザー・プロジェクト(2003年)ー ロンドンのテート・モダン、タービンホール。巨大な人工の太陽と霧で空間を満たし、数百万人が床に寝転んで見上げました。
- ニューヨーク・シティ・ウォーターフォールズ(2008年)ー イースト・リバーに人工の滝を四つ設置した公共プロジェクト。
- あなたの虹のパノラマ(2011年)ー デンマーク・オーフス美術館の屋上に置かれた、全周が虹色のガラスの円形通路。恒久設置です。
- アイス・ウォッチ(2014年ー)ー グリーンランドの氷を都市の広場に運び、溶けるにまかせた作品。
- カラー・アクティヴィティ・ハウス(2010年)ー 金沢21世紀美術館の恒久展示作品。
国際的な評価
2003年のヴェネチア・ビエンナーレでデンマーク館の代表を務め、同じ年のテート・モダンでの《ウェザー・プロジェクト》で一気に世界的な知名度を得ました。パリのフォンダシオン ルイ・ヴィトンやロンドンのテート・モダンでの大規模個展など、主要美術館での回顧展を重ねています。
日本で見られる場所
最も確実なのは金沢21世紀美術館です。屋外の芝生に立つ《カラー・アクティヴィティ・ハウス》は、シアン・マゼンタ・イエローの色ガラスの壁が渦巻き状に配置されたパビリオンで、恒久展示のため通年で体験できます。歩く位置によって色が重なり合い、向こう側の人や景色の色が変わっていきます。入場無料の交流ゾーンにあり、天候を選ばず楽しめるのも利点です。
東京では、麻布台ヒルズの森JPタワーに、2023年の新作《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》が吊り下げられています。リサイクル金属を鋳造した螺旋状の構造体が四つ、人々の頭上で光を反射します。
このほか国内の主要館で企画展が繰り返し開かれており、金沢21世紀美術館では2009〜2010年に大規模な個展も行われました。
見どころ
金沢の《カラー・アクティヴィティ・ハウス》では、ぜひ一周歩いてみてください。同じ場所に立ち止まっているだけでは、この作品の半分も見たことになりません。自分が動くと色が変わり、色が変わると景色が変わる。作品を動かしているのが自分自身だと気づいた瞬間が、エリアソンの狙いどころです。