宮島達男:数字を数え続けるLEDの光

宮島達男:数字を数え続けるLEDの光

画家

1から9まで数え、0を表示しない。宮島達男のLEDカウンターは、点滅ではなく「生命の時間」そのものです。直島・角屋の《Sea of Time '98》は、島民125人がそれぞれの速さを決めた作品として知られています。

宮島達男(1957-)は、発光ダイオード(LED)のデジタルカウンターを用いる現代美術の作家です。ひとつひとつの数字が異なる速さで1から9を数え続ける光景は、一度見たら忘れられません。

経歴

1957年、東京に生まれました。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、同大学院を修了しています。学生時代はパフォーマンスを行っていましたが、1980年代後半にLEDのデジタルカウンターに出会い、以後この素材を制作の中心に据えました。

転機は1988年です。ヴェネチア・ビエンナーレの若手作家部門「アペルト88」に出品した《Sea of Time》が高い評価を受け、一躍国際的な注目を集めました。以来、世界各地の美術館やビエンナーレで作品を発表しています。

作風と手法

宮島の作品を貫くのは、三つの言葉です。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」。仏教的な生命観に根ざしたこのコンセプトが、そのままLEDカウンターの挙動になっています。

重要なのは、カウンターが0を表示しないことです。1から9まで数えると、次は表示が消え、また1に戻ります。宮島にとって0は「死」であり、それは数字ではなく闇として現れるべきものだからです。そして数字の速さは一つずつ違います。速く生きる者も、ゆっくり生きる者もいる――光の粒がばらばらに明滅する空間は、そのまま人間の集まりの比喩になっています。

主な作品

  • 《Sea of Time '98》(1998年):香川県直島、家プロジェクト「角屋」。築約200年の民家を修復し、屋内に水を張ったプールを設え、125個のLEDカウンターを沈めました。それぞれの速さは、5歳から95歳までの直島の島民125人が自分で決めています。
  • 《Counter Void》(2003年):東京・六本木、テレビ朝日本社の壁面。高さ約5メートル、全長約50メートルにわたる6桁の巨大な数字です。東日本大震災の直後から哀悼の意を込めて消灯され、その後は期間限定で再点灯するプロジェクトが行われてきました。
  • 《Mega Death》(1999年):ヴェネチア・ビエンナーレ日本館で発表された、青いLEDが一斉に消灯する大規模インスタレーションです。
  • 《Counter Voice》シリーズ:水や炎、灰の中で自らカウントする姿を記録した映像作品です。

国際的な評価

1988年のヴェネチア・ビエンナーレ「アペルト」で国際的にデビューし、1999年には日本館の代表作家として同ビエンナーレに参加しました。ニューヨーク近代美術館やテート・モダンなど、海外の主要美術館が作品を所蔵しています。2020年には森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち」に、日本を代表する作家の一人として選ばれました。東北芸術工科大学や京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)で副学長を務めるなど、美術教育にも携わってきました。

日本で見られる場所

まず訪ねたいのは直島の家プロジェクト「角屋」(香川県直島町本村地区)です。外光を落とした古民家に入ると、暗闇の底で125個の数字がゆらゆらと明滅しています。ここは島民が制作に参加した最初期の例で、瀬戸内の現代アートを語るうえで欠かせない場所です。共通チケットで他の家プロジェクトと合わせて見られます。

東京では六本木けやき坂通りのテレビ朝日本社壁面に《Counter Void》が設置されています。現在は消灯した状態ですが、巨大な数字のかたちは通りから見ることができます。またファーレ立川(東京都立川市)の屋外アート群にも宮島の作品が含まれており、こちらは街を歩きながら無料で鑑賞できます。

美術館では、東京都現代美術館をはじめとする国内の主要館が作品を所蔵しており、コレクション展で公開されることがあります。

見どころ

宮島の作品は、しばらく立ち止まって眺めるほど面白くなります。最初はただの明滅に見えたものが、目が慣れてくると「あの数字は速い」「こちらはやけに遅い」と個体差が見えてくる。やがて、消えている瞬間のほうが気になり始めます。数えているあいだが生で、消えているあいだが死。作品の前に立つ時間そのものが、鑑賞の内容になる作家です。