大川美術館:桐生の丘の家で出会う松本竣介、サラリーマンが築いた奇跡のコレクション
実業家・大川栄二が集めた約7,500点を収蔵する桐生の私立美術館。松本竣介と野田英夫を核に、丘の斜面の住宅を改装した迷路のような展示室で近代絵画を堪能できます。
はじめに:一人の情熱が生んだ美術館
大川美術館は、1989年(平成元年)4月に群馬県桐生市に開館した私立美術館です。創設者の大川栄二は桐生市出身の実業家で、会社勤めの傍ら給料をつぎ込んで絵を買い続けた伝説的コレクター。その収集品は約7,500点にのぼり、質の高い日本近代絵画コレクションとして知られています。水道山の中腹に建つ元銀行社員寮を改装した建物は、松本竣介の子息である建築家・松本莞の設計によって増改築されたもので、斜面に沿ったスキップフロア方式。階段と小部屋が入り組む独特の構造で、「絵のある家」を巡るような親密な鑑賞体験ができます。
コレクション:松本竣介と野田英夫
コレクションの核は、戦時下の東京を澄んだ青で描いた松本竣介と、アメリカで生まれ日米を往復しながら活動した夭折の画家・野田英夫です。松本竣介については「街」(1938年)や「運河風景」(1943年)といった代表作を含め、油彩からデッサンまで体系的に収蔵し、記念室が設けられています。野田英夫「都会」(1937年)も見逃せません。ほかにピカソ、ルオー、ベン・シャーン、ルネ・マグリットなど内外の近代美術が並び、一人のコレクターの一貫した眼を感じさせます。
3つの見どころ
松本竣介の世界
代表作「立てる像」で知られる画家の静謐な世界を、まとまった数の作品でたどれる貴重な機会です。都市の風景をコラージュのように再構成した画面は、戦争という時代にあってなお、静かに澄みきっています。
迷路のような展示室
斜面に沿って下りながら巡る小部屋群。次の角で何に出会うかわからない楽しさがあります。各室にソファが置かれ、自宅で絵を眺めているような時間を過ごせるのも、この館ならではです。
桐生の織物のまち散策
ノコギリ屋根の織物工場が残る桐生の街歩きとセットで楽しめます。水道山からの眺めもあわせて、半日かけて歩きたい町です。
施設情報・アクセス
住所: 〒376-0043 群馬県桐生市小曾根町3-69
アクセス: JR両毛線「桐生」駅から徒歩約13分、上毛電鉄「西桐生」駅から徒歩約8分
開館時間: 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日: 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
観覧料: 一般1,000円、高大生600円、小中生300円
