少女:アカデミーの巨匠ブグローが市場向けに描いた祈りの小品

画像:出典:国立美術館所蔵作品総合目録検索システム(国立西洋美術館所蔵)

少女:アカデミーの巨匠ブグローが市場向けに描いた祈りの小品

名画
作者
ウィリアム=アドルフ・ブグロー
制作年
1878年
所蔵
国立西洋美術館
所在地
東京都台東区

ブグローが1878年に描いた、胸もとで手を合わせて祈る少女の半身像。アカデミーの重鎮が画廊向けに手がけた小品ながら、演出を抑えた自然な表現が印象に残ります。日本の個人収集家から2008年に国立西洋美術館へ寄贈された一枚です。

ウィリアム=アドルフ・ブグローの《少女》は、1878年に描かれた45.5×38センチメートルの小さな油彩画です。胸もとで小さな手を合わせ、祈りのポーズをとる少女の半身像で、国立西洋美術館が2008年に寄贈を受けて収蔵しました。同館の表記は「ウィリアム・アドルフ・ブーグロー」です。

《少女》とは

技法は油彩・カンヴァス、左上に「W. BOUGUEREAU」の署名、右上に「1878」の年記があり、所蔵番号はP.2008-0004です。ブグローは1825年にフランス西部の港町ラ・ロシェルに生まれ、1905年に同じ町で没しました。19世紀後半のフランス美術界に君臨した美術アカデミーの重鎮で、古典の伝統と高い技術に支えられた神話画や宗教画の大作でサロンの成功を重ねました。念入りに仕上げられた滑らかな肌の、甘美で官能的な女性像がとくに知られています。

一方でブグローは画廊と契約を結び、絵画市場向けの小品も手がけていました。同館の解説は、本作をそうした商業的な人物画のひとつと位置づけています。母子の情愛や愛らしい少女を描いたブグローの人物画は、当時イギリスやアメリカの収集家の間で広く人気を集めました。本作もグーピル画廊に《祈り(En prière)》の題で引き渡されています。

どこで見られる?

  • 所蔵先:国立西洋美術館(所蔵番号 P.2008-0004)
  • 所在地:東京都台東区上野公園7-7
  • 展示状況・観覧料:2026年8月時点で、同館の所蔵作品検索は本作を「現在は展示していません」と表示しています。常設展(コレクション展)の観覧料は一般500円、大学生250円、高校生以下と65歳以上は無料です。

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 手の組み方:胸もとで合わせた小さな両手が画面の中心をつくり、視線を顔へ導きます。祈りという主題を、道具立てに頼らず身振りだけで示した構図です。
  • 抑制された表情:同館は、1865年に描かれた同主題の《祈り》に見られる類型的で演出された少女像に比べ、本作にはより抑制的で自然な表現が見られると指摘しています。実在のモデルの気配が感じられる、という見方です。
  • 同じ年の作品とのつながり:1878年、ブグローはサロンやパリ万国博覧会に出品する大作のほか、グーピル画廊のために《春の花々》を制作し、好評を受けて弟子と共同で《花を抱える子供》も手がけました。本作の少女は、これらに描かれた少女に酷似しています。ブグローはしばしば家族や近所の少女たちをモデルに使ったといわれます。

この絵が日本にある理由

この絵は、1878年4月10日にブグロー自身が《祈り》の題でグーピル画廊へ売却したところから記録が始まります。1880年3月にはニューヨークのリーヴィット・アート・ギャラリーで「Childhood's Prayer」の題で競売にかけられ、その後ロンドンのウィリアムス・アンド・サン画廊を経て、日本の個人収集家の手に渡りました。

そして2008年、この個人収集家から国立西洋美術館へ寄贈されます。松方コレクション由来でも館の購入でもなく、日本国内の所蔵者からの寄贈によって国立館に入った作品です。2012年の国立美術館巡回展や、2023年から2024年の同館の特集展示「もうひとつの19世紀—ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」など、館外・館内の展示で紹介される機会も重ねてきました。

まとめ

《少女》は、アカデミーの頂点に立った画家が市場向けに描いた小品でありながら、演出を抑えた自然な少女像として見応えのある一枚です。45.5×38センチメートルという小ささも、大作のサロン絵画とは違う親密さを生んでいます。常設展に出ていない期間があるため、訪問前に同館の所蔵作品検索で展示状況を確認するのが確実です。特集展示で並ぶ機会もあるので、展覧会情報にも目を配ってみてください。