川崎市岡本太郎美術館:生田緑地の森にそびえる「母の塔」、爆発する芸術の原点へ
川崎市出身の岡本太郎が作品を故郷に寄贈したことから1999年開館。生田緑地の自然の中、高さ30mの「母の塔」を目印に、太郎芸術の全貌に触れられます。
はじめに:岡本太郎、故郷への贈り物
川崎市岡本太郎美術館は、1999年(平成11年)に川崎市多摩区の生田緑地内に開館した美術館です。川崎市で生まれた岡本太郎が、1991年に代表作を含む作品群を故郷の川崎市へ寄贈したことがきっかけとなりました。「芸術は爆発だ!」の言葉で知られる太郎の絵画・彫刻・写真など約1800点を核に、その思想までも体感できる美術館です。建物の設計は久米設計、シンボルの「母の塔」は現代芸術研究所が手がけました。
時代背景:パリで鍛えられた「対極主義」
岡本太郎は1911年、川崎市の高津に生まれました。10代の終わりに渡ったパリで抽象美術の運動に加わり、社会学者マルセル・モースのもとで民族学を学ぶという、画家としては異例の経歴を積みます。帰国後は、調和ではなく矛盾するものを画面の中で正面衝突させる「対極主義」を唱え、日本の伝統観そのものを揺さぶりました。縄文土器の造形美を発見し、1970年の大阪万博で「太陽の塔」を打ち立てた背景には、この徹底した思考があります。
コレクション:太郎と、両親の物語
「傷ましき腕」(再制作)など初期の前衛絵画から、「重工業」「森の掟」といった原色がぶつかり合う戦後の代表作、座り心地よりも対話を求める「坐ることを拒否する椅子」のようなユーモラスな立体まで、岡本太郎の全時期をカバーします。あわせて、漫画家の父・岡本一平、歌人で小説家の母・岡本かの子という異色の芸術一家の資料も収蔵。太郎という「爆発」がどんな土壌から生まれたのかをたどることができます。芸術を専門家の手から生活者の手に取り戻そうとした著書『今日の芸術』の主張が、そのまま空間になったような美術館だと言えるでしょう。
3つの見どころ
シンボルタワー「母の塔」:高さ30m。「大地に深く根ざした大樹」と「豊かな母の姿」をイメージした、美術館のシンボルです。多摩川河畔にある岡本かの子の文学碑「誇り」に向かうように建てられています。
体感型の展示空間:太郎の芸術は「見る」より「ぶつかる」もの。原色の絵画と奇怪な彫刻が迫ってくる展示構成です。
生田緑地の自然:枡形山の雑木林に囲まれ、散策とセットで楽しめます。縄文に心を撃たれた太郎にふさわしいロケーションで、隣接する日本民家園などにも足をのばせます。
訪問前にご確認を
施設の改修工事のため、2026年3月30日から2029年3月31日(予定)までの間、展示室が休室となっています。この期間は館内の無料スペースでミニ展示が行われ、観覧は無料です。屋外の「母の塔」は引き続き見ることができます。訪問を計画する際は、必ず公式サイトで最新の状況をご確認ください。
施設情報・アクセス
住所:神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-5(生田緑地内)
アクセス:小田急線「向ヶ丘遊園」駅から徒歩約17分
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休)、年末年始(12月29日~1月3日)
