すみだ向島EXPO:戦前の長屋が残る京島で開かれる「まちなか博覧会」
墨田区北部・京島や八広の古民家や店舗を舞台に、毎年秋に開かれるまちなか博覧会。約100件の展示・イベントで、下町の日常とアートが混ざり合います。
はじめに:長屋の路地がまるごと博覧会場に
すみだ向島EXPOは、東京都墨田区北部の向島エリア(八広、向島、京島、寺島、文花、立花など)を舞台に、毎年秋に開かれる「まちなか博覧会」です。2020年に始まり、「多様な表現を通して地域に接続する」を理念に、古民家や営業中の店舗を会場として約100件の展示やイベントが展開されます。
成り立ち:コロナ禍の秋に始まった
第1回が開かれたのは2020年9月から10月にかけて。「隣人と幸せな日」をテーマに掲げ、人と人、人と空間の距離が問い直されていた時期だからこそ、芸術とまちのあたたかな結びつきを目指す試みとして立ち上がりました。この地域には、かつて「向島博覧会」と呼ばれるまちなかイベントの記憶もあり、その約20年後に形を変えて再び動き出したかたちです。運営はすみだ向島EXPO実行委員会が担い、一般財団法人八島花文化財団が地域の空き家再生などとあわせて活動を支えています。
絶対に知っておきたい!3つの見どころ
1. 戦前からの長屋が東京で最も多く残る京島
中心会場となる京島は、戦災を免れた戦前からの木造長屋が東京で最も多く現存するといわれるエリアです。細い路地と長屋の連なりそのものが、この博覧会の最大の展示物といえます。防災上の課題を抱えながらも、その建物群をどう活かすかという問いが、催しの根底に流れています。
2. 暮らしのすぐ隣にあるアート
会場は古民家、商店、長屋を改装したギャラリーなど、まちの日常の中に点在します。作品を探して路地を歩くうちに、八百屋や喫茶店の風景まで作品の一部のように見えてくる、独特の鑑賞体験が味わえます。展示だけでなく、ワークショップや音楽、飲食を伴う催しも同時に走っており、まさに「博覧会」と呼ぶにふさわしい賑わいです。
3. 住民とアーティストの交流
アーティストやクリエイターが下町の日常やまちと密接に関わりながら制作するのが特徴で、地域住民と来場者の交流も自然に生まれます。会期に合わせて滞在制作を行う作家もおり、住まい手の話を聞きながら生まれた作品に出会えることも少なくありません。「見る」だけでなく「まちに参加する」感覚を楽しめます。
鑑賞のヒント
まず総合案内所の「うちらの居間 分館」(墨田区京島3-17-7)を訪ねてマップを手に入れるのが定番の始め方です。2026年の第7回からはパスポート制ではなく、体験に応じて気持ちを渡す寄付制になりました。会場は徒歩で回れる範囲にまとまっており、半日から1日あれば主要な展示をたどれます。会期中も開場は金・土・日・月を中心とする日程が組まれることが多いので、訪問日は事前に確認を。会場となる長屋や店舗は、催しが終わっても普段どおりそこにあり、通年で営業しているカフェや工房もあります。
開催概要
- 開催地: 東京都墨田区北部・向島エリア(京島を中心に八広、寺島、文花、立花など)
- 主な会場: 総合案内所「うちらの居間 分館」(京島3-17-7)、京島の長屋や古民家、地域の商店や工房
- 開催ペース: 毎年
- 開催時期: 例年10月〜11月上旬の約1か月(第6回は2025年10月4日〜11月3日、第7回は2026年10月10日〜11月1日)
- アクセス: 京成押上線「京成曳舟」駅から徒歩約7分、東武スカイツリーライン「曳舟」駅から徒歩圏
- 主催: すみだ向島EXPO実行委員会(一般財団法人八島花文化財団)
まとめ
すみだ向島EXPOは、大規模な国際芸術祭とはひと味違う、暮らしの温度が伝わる小さな祭典です。2026年には墨田区全域で「すみだ五彩の芸術祭」(9月4日〜12月20日)も初開催され、すみだのまちなかアートはますます充実します。東京スカイツリーの足元から歩いて向かえる距離にありながら、そこには観光地とは違う時間が流れています。下町散歩が好きな人にこそ訪れてほしい芸術祭です。
