FUJI TEXTILE WEEK:織物のまち富士吉田で開く、布の芸術祭
山梨県富士吉田市で秋に開かれる、布をテーマにした芸術祭。いまも織物工場が動きつづける産地のまちを会場に、現代アートとテキスタイルが交わります。2021年に始まり、2025年で第4回。テーマは「織り目に流れるもの」でした。
はじめに:布からアートを考える、国内でも珍しい芸術祭
FUJI TEXTILE WEEKは、山梨県富士吉田市で開かれている、布をテーマにした芸術祭です。2021年に始まり、2025年で第4回を迎えました。富士山の北麓に位置する富士吉田は千年以上の歴史をもつ織物産地で、いまも多くの機屋(はたや)が稼働しています。江戸期には「甲斐絹(かいき)」と呼ばれる薄手の絹織物で知られ、羽織の裏地など、見えないところに贅を尽くす布を生んできた土地です。その産業と現代アートを正面から結びつけ、下吉田の本町通り周辺のまちを歩きながら作品を見てまわる構成が特徴になっています。テキスタイルを主題に据えた芸術祭は、国内でも数えるほどしかありません。
主催は富士吉田市で、アート展のディレクターは南條史生。森美術館の館長を長く務めた人物で、初回の2021年から関わっています。第1回は「織りと気配」と題し、まちなかの空き店舗や倉庫、旧銀行の建物を会場に開かれました。
絶対に知っておきたい!3つの見どころ
1. 産地そのものが会場になる
会場は美術館ではなく、まちの中です。富士山を望む本町通りを軸に、織物にまつわる建物や空き店舗、倉庫などが展示空間に変わります。産地の日常が続いているすぐ隣で作品を見ることになるので、布が生まれる現場の空気ごと味わえます。展覧会のほかにも、産地の生地を扱うYAMANASHI TEXTILE SHOPや、織物工場の新作生地の展示、バイヤー向けのMEET WEAVERS SHOWなどが同時に開かれ、鑑賞と商いが同じ会期に同居しているのもこの芸術祭らしいところです。まち歩きとアート鑑賞が自然に混ざり合う設計といえます。
2. 年ごとのテーマが展示全体を貫く
2025年のテーマは「織り目に流れるもの」。織物の目に見えない力や、産地に流れてきた時間を可視化することが主題に据えられました。A-POC ABLE ISSEY MIYAKEをはじめとする作り手が参加し、テキスタイルの技術と現代アートの表現が同じ会場に並びます。ファッションデザイナーの山縣良和が主宰するcoconogaccoとの企画や、海外の学生との共同プロジェクトなど、教育の現場を巻き込む取り組みも並行して行われました。産地の職人がもつ手わざと、現代作家の発想がぶつかったときに何が生まれるのか。その答えが年ごとに更新されていくのを追いかけられるのが、回を重ねてきた芸術祭の面白さです。
3. 地元と若い世代に開かれた料金設計
チケットは前売一般2,000円、学生1,500円(当日は一般2,500円、学生2,000円)ですが、高校生以下および18歳未満の方、65歳以上の方、心身に障がいのある方と付き添い1名、そして富士吉田市民は無料です。産地に暮らす人たちが自分たちのまちの芸術祭として通えるよう配慮されている点も、この芸術祭の性格をよく表しています。
開催概要
- 開催地: 山梨県富士吉田市 下吉田本町通り周辺
- 主な会場: 本町通り沿いの織物工場、倉庫、空き店舗などのまちなかの建物
- 開催ペース: 2021〜23年は毎年開催、2024年は準備期間として休止し、2025年に第4回(隔年開催に移行)
- 開催時期: 2025年は11月22日から12月14日まで。例年、秋から初冬にかけての約3週間
- アクセス: 富士急行線 下吉田駅から徒歩圏。新宿から高速バスで富士山駅方面へ向かうルートも便利です
- 主催: 富士吉田市(アート展ディレクター:南條史生)
まとめ
布という身近な素材を入り口に、産業と土地と現代アートがつながっていく芸術祭です。富士山を背にした商店街を歩きながら作品を巡る時間は、ほかでは味わえません。会期は3週間ほどと短く、開催は晩秋から初冬。標高も高く冷え込むので、防寒をしっかりして出かけるのがおすすめです。ファッションやテキスタイルに関心のある方はもちろん、まち歩きが好きな方や、地場産業のこれからに関心がある方にも見応えのある内容になっています。
