モネ《舟遊び》:画面の大半が水面という大胆な一枚

モネ《舟遊び》:画面の大半が水面という大胆な一枚

名画
作者
クロード・モネ
制作年
1887年
所蔵
国立西洋美術館
所在地
東京都台東区

クロード・モネが1887年に描いた《舟遊び》は、国立西洋美術館が所蔵する松方コレクションの代表作。画面のほとんどを水面が占め、小舟も娘たちも風景の一部のように溶けこみます。上野の常設展で会える名画です。

クロード・モネが1887年に描いた《舟遊び》は、東京・上野の国立西洋美術館が所蔵する松方コレクションの代表作のひとつです。画面のほとんどを占めるのは、揺れる川の水面。小舟も、そこに乗る娘たちも、まるで水の風景そのものに溶けこんでいくように描かれています。特別展のチケットがなくても、常設展の観覧料だけで向き合える一点です。

《舟遊び》とは

正式な作品名は《舟遊び》(英題On the Boat)、作者はクロード・モネ、制作年は1887年です。技法は油彩・カンヴァスで、寸法は145.5×133.5センチ。国立西洋美術館の所蔵番号はP.1959-0148で、画面の左下に「Claude Monet 1887」の署名と年記が入っています。

最初の妻カミーユを亡くしたモネは、1883年に2人の子供たち、そしてのちに正式に結婚することになるアリス・オシュデとその子供たちを連れて、ジヴェルニーへ移り住みました。画家はこの地で、自宅の近くを流れるセーヌ川の支流エプト川で舟遊びを楽しむ家族の情景を、何度も繰り返し描いています。舟遊びは当時人気の休日の娯楽でした。国立西洋美術館は本作を、一連の「舟遊び」の作品のなかでも完成度の高いものと位置づけています。

同館での展示歴も豊富です。2017年の「北斎とジャポニスム」展、2019年の開館60周年記念「松方コレクション展」、2022年のリニューアルオープン記念「自然と人のダイアローグ」展、そして2024年から2025年にかけての「モネ 睡蓮のとき」展にも出品されました。《睡蓮》ほど有名ではないかもしれませんが、同館のモネを語るうえで欠かせない一点だということが分かります。

どこで見られる?

  • 所蔵先:国立西洋美術館
  • 所在地:東京都台東区上野公園7-7(JR上野駅公園口からすぐ)
  • 展示状況:常設展(コレクション展)で展示中です
  • 観覧料:常設展(コレクション展)は一般500円、大学生250円、高校生以下と65歳以上は無料
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)と年末年始

展示状況や観覧料は所蔵館の公式サイトで確認してください。

見どころ3選

  • 画面いっぱいの水面:水面の上半分は明るい空を映した青とバラ色、下半分は小舟と娘たちの影が濃紺や茶、青の筆触で描かれています。人も舟も水面と同じ風景となって、画面に溶けこんでいきます。
  • 浮世絵からヒントを得た構図:川の面を上空から見下ろす視点、そして右半分を大胆に断ち切った小舟の配置。これは日本の浮世絵からヒントを得たと考えられています。モネ自身が浮世絵のコレクターでした。
  • 光と影が作る色のハーモニー:画家の関心は物語ではなく、揺らめく光と影が水面に作りだす色の響き合いにありました。少し近づいて筆づかいの一つひとつを追うと、その狙いがよく見えてきます。

この絵が日本にある理由

本作は「松方コレクション」の一点です。国立西洋美術館の記録によれば、1921年12月ごろに松方幸次郎が購入し、1944年にフランス政府が接収、そして1959年にフランス政府から寄贈返還されて同館の所蔵となりました。

松方幸次郎は川崎造船所の初代社長を務めた実業家で、第一次世界大戦期のロンドン滞在をきっかけに、1916年ごろから1920年代半ばにかけてヨーロッパへ足しげく通い、絵画や彫刻から家具、タペストリーまで膨大な美術品を買い集めました。その総数は1万点を超えたと言われます。

ところがパリに残された約400点は戦時中にフランス政府に接収され、戦後の1951年のサンフランシスコ平和条約によって正式にフランス国有となってしまいます。その後フランス政府は日仏友好のため、その大半を「松方コレクション」として日本へ寄贈返還することを決めました。返還された作品を受け入れる器として1959年に開館したのが、国立西洋美術館です。本館はル・コルビュジエの設計で、2016年には世界遺産にも登録されています。

まとめ

《舟遊び》は、モネが水面というひとつのモチーフだけで一枚の絵を成立させた、実験的で完成度の高い作品です。同時に、松方コレクションと国立西洋美術館の成り立ちを静かに物語る一点でもあります。上野公園まで足を運べば、常設展の観覧料だけで本物と向き合えます。出かける前に、公式サイトで展示状況を確かめておくと安心です。