国立故宮博物院(台北):翠玉白菜が待つ、中国歴代皇帝の至宝
台北市郊外にある、中国歴代王朝の宮廷コレクションを収蔵する博物館。「翠玉白菜」「肉形石」など、精緻な技巧を凝らした工芸品と書画約70万点を誇る、中華文化の至宝の殿堂です。
はじめに:紫禁城の至宝を台湾へ
国立故宮博物院は、1965年11月に台湾・台北の郊外、士林区の外双渓で開館した博物館です。収蔵品の多くは、北京の紫禁城に伝わった歴代中国王朝の宮廷コレクションで、日中戦争と国共内戦の戦火を避けるため中国各地を転々と疎開し、最終的に台湾へ運ばれたという複雑な歴史を背負っています。収蔵品は約70万件にのぼり、中華文化の粋を集めた世界屈指のコレクションとして知られています。2015年には南部の嘉義県太保市に南部院区も開館し、現在は二館体制で運営されています。台北の本館は緑瓦の屋根を戴く中国宮殿風の意匠をもち、山を背にして建つ姿そのものが台北を代表する風景となっています。
コレクション:技巧の粋を尽くした工芸と書画
陶磁器、青銅器、玉器、書画、古籍文書など、中国美術のあらゆるジャンルを網羅するコレクションが特徴です。宮廷が数百年かけて集め、皇帝自らが鑑賞し目録に記録した品々であるため、一点一点の格が違います。西周時代の青銅器「毛公鼎」には約500字の長大な銘文が鋳込まれ、蘇軾の書「黄州寒食詩巻(寒食帖)」は「天下第三の行書」と称される名品です。清朝の職人技が結晶した精緻な工芸品は、素材そのものの色や模様を巧みに活かした「見立て」の妙技で来館者を驚かせます。膨大な収蔵品数のため、常設展示といえども展示替えを繰り返しながら少しずつ公開されており、訪れるたびに違う顔を見せます。
3つの見どころ
翠玉白菜
一塊の翡翠から白菜と、その葉に止まる虫を彫り出した超絶技巧の名品です。緑と白が入り混じった石の色の境目を、そのまま葉と芯に見立てており、素材の偶然を作品へと変えた発想そのものが見どころです。
肉形石
天然の縞模様をもつ石に加工と着色を施し、まるで本物の豚の角煮のように仕上げた遊び心あふれる工芸品です。皮の質感まで再現されています。なお翠玉白菜とともに南部院区へ出張することがあり、いつでも見られるとは限りません。
范寛「谿山行旅図」
北宋時代の山水画の最高峰とされる大作。画面の大半を占める巨大な岩山と、その足元をゆく小さな隊商の対比が、自然に対する人間の小ささを静かに突きつけます。長らく無署名と考えられていましたが、1958年に画面右下の木立の陰から「范寛」の署名が発見され、真筆であることが裏づけられました。中国絵画史の金字塔と呼ぶにふさわしい一点です。
施設情報・アクセス
所在地: 台湾・台北市士林区至善路二段221号
アクセス: 台北MRT淡水線「士林」駅からバス「紅30」などで約10分
開館時間: 9:00~17:00(時期により延長される場合があります)
休館日: 月曜日(開館日を拡大する試行期間が設けられることがあるため、訪問前に公式情報の確認を)
入館料: 一般 NT$350(18歳未満は無料)
代表作ギャラリー



作品画像はパブリックドメイン(出典: Wikimedia Commons)