写実主義(リアリズム):美化された神話よりも、目の前の「日常と真実」を描く
19世紀半ばのフランスで起きた写実主義の革命。「天使を見せてくれれば描いてみせる」と語ったクールベは、労働者やありのままの風景を描き、近代絵画への道を開きました。
はじめに:「歴史画や神話」という絵空事からの決別
それまでの西洋美術界では、聖書の一場面やギリシャ神話、歴史的偉業を描くことこそが「高貴な芸術」とされ、貧しい農民や労働者の日常を描くことは卑しいものとされていました。この常識を打ち破り、「美化された嘘ではなく、目の前にある厳しい現実こそを描くべきだ」と反旗を翻したのが、ギュスターヴ・クールベらの写実主義(リアリズム)です。
特徴:リアリズムの宣言
クールベは「天使なんて見たことがないから描けない」と語り、自身が目撃した田舎の普通の葬式を、通常は王室の歴史画にしか使われない巨大なキャンバスに等身大で描き出しました(「オルナンの埋葬」)。また、ジャン=フランソワ・ミレーらバルビゾン派は、自然の農村の中で汗を流して働く農民の姿を宗教的とも言える厳かな光で描き、人々に衝撃を与えました。
3つのポイント
- 主題の民主化: 神や貴族から、一般の労働者や田舎の風景へと、絵画の主役が市民へとシフトしました。
- バルビゾン派との合流: 都市を離れ、森や農村で光と土の匂いを直接描いた画家たちが、のちの印象派へとバトンを渡します。
- クールベの「個展」: 万国博覧会で展示を拒否されたクールベは、会場の隣に自分で小屋を建てて日本初の「個展」を開催。画家の独立を示しました。