大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ:里山とアートの融合
新潟県の広大な里山を舞台にした世界最大級の国際芸術祭。自然と人間の関わりを見つめ直す、壮大で泥臭いアートプロジェクトの全貌。
はじめに:過疎の村を、アートの力で世界的な聖地へ
新潟県の南部、十日町市と津南町からなる「越後妻有(えちごつまり)地域」。冬は豪雪地帯となり、深刻な過疎と高齢化に悩まされていたこの広大な里山を舞台に、2000年にスタートしたのが「大地の芸術祭」です。
今や世界中に広がる「地域密着型アートフェスティバル」の先駆けであり、最高峰。東京23区より広い約760平方キロメートルの大自然の中に、世界中のアーティストによる作品が点在しています。
構想を立ち上げ、第1回から総合ディレクターを務めてきたのはアートディレクターの北川フラムです。2024年の第9回では41の国と地域から275組が参加し、311点が公開されました。次回は節目の第10回にあたり、2027年7月17日から11月7日までの85日間の開催が発表されています。
絶対に知っておきたい!3つの見どころ
1. 圧倒的なスケールの「大自然×アート」
大地の芸術祭の作品は、ホワイトキューブ(真っ白な美術館の部屋)の中にはありません。棚田のド真ん中、鬱蒼としたブナ林の中、川のほとりなど、大自然の中に突如として巨大なアートが出現します。例えば、イリヤ&エミリア・カバコフの『棚田』は、農作業をする人々の彫刻とテキストが実際の棚田に配置され、四季折々の風景の中で詩的な美しさを放ちます。
2. 廃校や空き家が、魂を揺さぶる美術館に
少子化で廃校になった小学校を丸ごと絵本の世界に変えた田島征三の『絵本と木の実の美術館』や、空き家全体を彫刻刀で彫り尽くした『脱皮する家』など、失われゆく地域の記憶をアートの力で保存し、新たな命を吹き込んでいるプロジェクトが多数あります。建物に入った瞬間、ノスタルジーと圧倒的な芸術のパワーに涙を流す人も少なくありません。
3. 地域のお母さんたちが作る「郷土料理」
アート作品を巡る合間にぜひ立ち寄りたいのが、廃校を利用したレストランなどです。ここでは、地元のお母さんたちが地元の野菜や山菜をたっぷり使って手作りした郷土料理のビュッフェなどを楽しむことができます。この土地の土から生まれた野菜を食べること自体が、大地の芸術祭の重要な体験の一部です。
会期の年でなくても作品は見られます
この芸術祭のありがたい点は、多くの作品が常設として残されていることです。ジェームズ・タレルが第1回のために手がけた『光の館』は宿泊できる作品として今も稼働していますし、2018年にMADアーキテクツの設計で生まれ変わった清津峡渓谷トンネルは、水鏡に峡谷が映り込む景色で知られ、通年で公開されています。拠点施設である越後妻有里山現代美術館MonET、まつだい「農舞台」、越後松之山「森の学校」キョロロ、上郷クローブ座なども通年で開いており、トリエンナーレの年を待たずに越後妻有を旅する楽しみ方ができます。
初心者が楽しむための鑑賞のコツ
- レンタカーか公式バスツアーを利用する: エリアがとてつもなく広いため、効率よく回るには車が必須です。運転が難しい場合は、主要な作品をガイド付きで回ってくれる公式のバスツアーが絶対にオススメです。
- 作品鑑賞パスポートを使う: 会期中は作品ごとに鑑賞料を払うより、対象作品をまとめて見られるパスポートのほうが割安です。2日以上滞在し、エリアを分けて回るのが王道の組み立て方になります。
- 「迷うこと」を楽しむ: 山道を走っていて道に迷うこともありますが、その途中で美しい棚田の風景や、地図にない小さな作品に出会うこともあります。効率ばかりを求めず、里山のドライブ自体を楽しんでください。
開催概要
- 開催地: 新潟県十日町市・津南町(越後妻有地域、約760平方キロメートル)
- 主な会場: 越後妻有里山現代美術館MonET、まつだい「農舞台」、越後松之山「森の学校」キョロロ
- 開催ペース: 3年に1度(2000年開始)
- 開催時期: 夏から秋。次回の第10回は2027年7月17日から11月7日までの85日間
- アクセス: 拠点はJR飯山線・ほくほく線の十日町駅。東京からは上越新幹線で越後湯沢駅へ出て、ほくほく線に乗り換えるルートが便利です
- 主催: 大地の芸術祭実行委員会(総合ディレクター:北川フラム)
まとめ
大地の芸術祭は、スマートで洗練された都市のアートとは対極にある、泥臭く、力強く、温かい芸術祭です。人間が自然とどう関わり、どう生きていくべきか。美しいアートを通して、そんな根源的な問いを私たちに投げかけてくれます。
